ラムサールCOP9(前半:2005年11月8〜11日)

■第一日目:11月8日(火曜日)夕方6時半〜

 こういう形の始め方は締約国会議としては初めてではないかと思われるが、この日は開会式のみで、朝から一日参加者登録を実施して夕方から開会式のみの実施となった。
 3代目ラ条約事務局長ピーター・ブリッジウォーター博士による開会の挨拶:『ミレニアム生態系アセスメント(MA)』の情報を用いて世界の湿地の状況を分析。その報告書が今回出版された。その中で、世界中で淡水湿地と沿岸湿地が減少もしくは悪化にある状況が強調されている。その一方で、ラムサール条約が成功していると言うことが出来るのだろうか」、と問題点を指摘した。
 新たな事務局長にとっては今回が初めての締約国会議であるが、博士は1996年のブリスベン会議の議長であり、長年オーストラリア連邦自然保護局長としてオーストラリア政府代表としてラ条約には関わってきた経験を持つ。
 ウガンダ政府代表やUNEP代表等の挨拶に続き、「ラムサール湿地保全賞」授与式が行われた。
 湿地保全賞の副賞(記念品及び賞金)を提供しているダノングループ代表の挨拶:「(ペット)ボトルに入った水(エヴィアン)が人々の健康のために重要だと言い続けてきたが、ボトルに入っていない水=湿地こそ人類の健康のために重要であると気づいた。そのため8年間ラ条約に協力してきた。」
3つの部門で以下の方々が受賞。

◆湿地管理部門:イランのネザミ・バルーチ博士
◆科学部門:中国の蔡述明(カイ・シュミン)博士
◆教育部門:ラムサールセンター(日本)中村玲子女史
      オーストラリアの湿地センター クリスティーン・プリエト女史
  • * 前日の日曜日、こどもラムサールとしてウガンダの小〜高校生、アジアからも日本、インド、韓国、タイの子供達が参加、カンパラ市内のインターナショナルスクールで交流会を実施した。ウガンダの子供達+日本の高校生が「ラムサール湿地保全賞」に先だって、会場で参加者にメッセージを伝えた。「会議で決められることは難しくて分からない。わかりやすい言葉で説明してほしい。」「私たちの方が長く生きるのだから(この地球の環境を)ちゃんと守ってほしい」というメッセージには会場から笑いとともに大きな拍手が響いた。
  •  オーストラリアの湿地センターは釧路国際ウェットランドセンターともこれまで提携・交流を行ってきている。クリスティーン女史は釧路会議開催10周年を記念した記念シンポの際にも釧路で講演を行っている。今回オーストラリアからのNGO参加者は彼女だけなんだそうだ。それにしても今回の受賞者がアジア・オーストラリア地域に偏っているのはちょいと心苦しいが、これまでの受賞者が他地域が多いことを考えると、アジアでも国際的に認められる業績が増えてきたことを素直に喜びたい。
■第二日目:11月9日(水曜日)

 午前中の本会議の予定時間は10時から午後1時となっている。この日は大統領が来る予定であったが、来れなくなったと言うことで若干もたつき、10時半からの開始となった。

(1)本会議 午前の部
i. まず一番の議題は議長選出である。議長が決まるまでは、前回の締約国会議開催国スペイン政府代表が議長の務めを果たした。開催国が議長候補を提供することになっており、ウガンダ水土地環境省大臣のオタフィリ氏が議長に、副議長としてオーストラリアとメキシコが選ばれた。異例のことだが、大臣業務が忙しいため、ウガンダ側からは議長代理も提供されることになった。
 挨拶の後、常設委員会の恒久メンバーとなっているスイスと英国政府代表がスピーチ。スイスは条約事務局所在国として、英国はかつて条約事務局の業務の一部(具体的にはデータベース)を担っていたIWRB(現在はWIで本部はオランダ)所在国として常設委員会に関わってきている。
 スイス政府代表はWWFによって準備された本『アフリカの湿地』出版を報告。英国政府代表はEUを代表して、世界中で取り組まれている「ミレニアム開発ゴール」の重要性を強調した。
この後、停電。停電は会議中にもしょっちゅう発生し、マイクロフォンが使えない、同時通訳が出来ない、プロジェクタが使えない、等々すべての作業が中断されることになるが、参加者もだんだんと慣れていくことになる。
 次に資格審査委員会メンバーの選出。これはきわめて実務的な作業で、各国政府代表団が大統領なり外務大臣なりから正式に国家を代表することを認められた書面を持っているかどうか、要するに国を代表する資格があるかどうかを国ごとに確認する作業を担うものだ。オセアニアでは、残念なことにパラオ代表が参加できなかったため、代わりにニュージーランドがメンバーになることになった。また、アフリカでは壇上から事務局次長ニック・ディビッドソンの指名に対して、地域会合で打ち合わせた内容と違うぞという指摘があり、「指名したのはガーナではなくベニンです。私の発音が悪かったんでしょう」と謝罪するシーンがあった。英語が母国語の人間でも国際舞台では誤解を生じさせることがあるので、日本人も安心しましょう。

ii. 次は会議中に予算財政問題を議論する委員会についてで、多額の拠出金(国民の税金ですが)を提供している日本もメンバーになりました。
 この後、アルゼンチンが英国との領土問題(フォークランド諸島の扱い)に関して、会議資料等における関連記述の削除を要請。これに対して英国は(領土問題に関して)問題があるとは思っていない、と押収。ウガンダ議長はこの問題に関するピンポン(ゲーム)にラムサール会議の中で時間をかけるわけにはいかないと調整を図る。1999年のコスタリカ会議でもイスラエルとアラブの国々の間で激しいやりとりがあり、会議進行が遅れたことがあった。

iii. 常設委員会議長(スロバニア)の報告:常設委員の中からカナダが予算財政小委員会の議長に選ばれたが、カナダ政府代表だったロバート・メルテル(?)氏は数日後に死亡してしまった。弔辞を述べながら常設委員会議長(スロバニア政府代表:女性)が最後に涙ぐむシーンも。
 この後日本政府代表が、昨日20ヶ所の登録湿地を新たに指定したと報告。ロシア政府代表は、ラ条約と気候変動枠組み条約との協働を要請した。

iv. ラ条約事務局長の報告:現在147ヶ国目の加盟があり、次回のCOPまでには150を越えるだろう。今後加盟国増加が期待される南太平洋地域で、SPREP(Apia)の重要性にも言及した。
 また、国別報告書が今回COPまでに100ヶ国から提出された。これは前回のCOPよりは少ないが、条約事務局の予想よりは多かったと言える。なぜならば、報告書の様式(フォーマット)が難しいとのコメントが多かったからだ。この点に関しては次回COPまでに改善したい、また他の環境条約との重複を避けるための努力を行う。
 ラ条約の使命を確実に実施する必要性を強調しなければならないが、同時に他のアリーナ(舞台)で何が起こっているかを理解する必要がある。
戦略計画に関しては、世界的なターゲットの8%以下がなんとか目標達成と言えるのみだ。実施項目が多く、欲張りすぎた点があるかも知れない。
新しいワイズユースの定義に関しての報告。これまでの定義は1987年(レジャイナ会議)に採択されたもので、時代の動きに合わなくなってきていた。この中では、エコロジカル・サービスという言葉が使われているが、語彙に関してはすべてのCPが満足しているわけではないことは理解している。
 また、CBD, FCCC&砂漠化対処条約が協働を目指すリエゾングループにラ条約はオブザーバーとして参加している。
 さらに「統合的管理計画」とCEPAに関心が高まっていることを指摘。
この後、各国代表から意見発表。パプアニューギニア(PNG)は新しい登録湿地(カミアリ(?)野生生物保護区)を指定、インドネシア、PNG、フィージーの間でエコリージョン協力が行われていると報告。さらにザンビアはじめ多くの国が新しい登録湿地の指定に関して報告を行った。たくさんの政府代表が発言を求めたので、時間内に全部発言できず、持ち越し。

(2)昼食時のサイドイベント(サイドイベントの時間は毎日昼休み中の1時15分〜2時45分に行われる。昼休みは1〜3時)
 この日顔を出したのはいくつものサイドイベントの中から、IOPs主催サイドイベントにした。(IOPsによる共同主催イベントは初めてとのこと)テーマは「湿地の知識、データ、モニタリング、そしてアセスメント」
 また、STRPの議長を務めてきたマックス・フィンレイソン(Max Finlayson)博士(現在は国際水管理機関)はなかなか話を始められなかった(Maxが始める前に3回ほど停電、問題が解決するまで待つこととなった)が、「ヨーロッパだけを例にしても、1999年と最近のデータを比較すると、湿地タイプごとの面積が大きく異なっている。すなわち、比較が出来ない。比較が出来ないと言うことは、どうなっているかわからないということだ。」Maxとともに『ミレニアム生態系アセスメント』分析を行った、元条約事務局アジア担当レベッカ・ドクルツ(Rebecca D'Cruz)女史は「そのような状況は受け入れがたい」とさらなる取組が必要であることを強調。30分遅く始まったため、残念ながら議論の時間なしで終了せざるを得なかった。

(3)本会議 午後の部(3時〜6時)
i. 各国政府による発言の続きから。エジプト政府代表が、鳥インフルエンザの問題に言及、これに対して条約事務局長は「明日の朝、会議委で議題にする」ことを約束。また、グアテマラ政府代表は、『国家湿地政策』が最終段階にあることを報告した。

ii. STRP議長(マックス・フィンレイソン博士)の報告:「ミレニアム生態系アセスメント」に基づいた『湿地報告書』について言及。また、河川流域管理(River Basin Mgmt)の必要性に触れ、水管理担当局の参加が是非とも必要だと強調した。

iii. 「決議案1」の紹介:「付属文書 a, b」については政治的事務的考慮がさらに必要と考えれるが、「c, d, e」についてはかなり技術的問題だと見なされる。

iv. 5時からはウガンダの湿地保全についての報告が行われた。今回の会議準備の中心人物であるウガンダ政府ポール・マファビ氏によるプレゼンテーション。ウガンダは陸に囲まれた国家だが、湿地は国土の13%を占めている。その重要性が認識されて、1986年には農地開発等を目的とした湿地排水 (drainage)が禁止された。そして1989年には、政府内に「湿地プログラム」が設置された。そして1994年には、ラムサール条約締約国としてはカナダに次いで2番目、途上国としては初の『国家湿地政策』が採択された。

『国家湿地政策』において用いられた戦略には以下のようなものがある:
1. (湿地の価値の)普及啓発活動とそれによって湿地に対する認識が高まるようにすること
2. 生態学的及び水文学的知識の収集と普及
3. 社会経済学的理解の促進
4. 湿地政策と関連法規の確立
1993年に提出された最初の「国家湿地政策」案は、協議が十分ではないと国会で却下されてしまった。さらなる協議の結果、翌年に第二案が採択された。
5. 県(District)ごとに湿地担当官を配置 (全部ではないが9県に)

これらの内容を詳しく記した100頁に及ぶ冊子『改変から保全へ―ウガンダの人々と環境のために湿地を管理した15年―』が会議参加者に配布された。

 この日の夜はウガンダ政府主催のレセプションが実施され、アフリカンダンスに始まり、参加者を踊りの輪に加わらせてのダンスパーティとなった。

第三日目: 11月10日(木曜日)

(1)本会議 午前の部
 議題12::各地域ごとの概況
 議題13::「決議案9」(『戦略計画』実施の効率化(Stremlining))
 カナダ政府代表による予算財政小委の報告:「今回の小委による最初の活動は、新事務局長の選択であった。また予算に関しては、当初条約事務局会計は数十万スイスフランの赤字となっていた。そのため、事務局員の国際的な出張、STRPのサポート等大幅に削減しなければならなかった。」
 「決議案2」について、午後の地域ごとの会合でさらに議論することを確認。「決議案3」の紹介で午前中の本会議は終了した。 


会議3日目、議長席中央が三代目条約事務局長ブリッジウォーター博士

(2)日本政府主催によるサイドイベント:日本の新登録湿地の紹介
i. ブリッジウォーター事務局長による湿地登録証の授与 
  1. 雨竜沼町長 「雨竜沼湿原」
  2. 森田センター長 「風蓮湖・春国岱」+「野付半島・野付湾」
  3. 田尻町長  「蕪栗沼・周辺水田」
  4. 内田博士  「串本沿岸地域」
  5. 島根県庁 「宍道湖」+「中海」
  6. 九重町長(九州) 「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」


日本各地の新登録湿地認定証の授与(環境省主催のサイドイベントにて)

ii. 名執野生生物課長による概説
iii. 黒岩議員による「ラムサール登録湿地を増やす議員連盟」の説明
iv. 雨竜町長による雨竜沼湿原の紹介
v. 森田正治センター長による野付半島・野付湾そして風蓮湖・春国岱の紹介 
vi. 田尻町長による蕪栗沼の紹介
vii. 内田博士による串本沿岸地域の紹介
viii. 島根県庁自然保護課長(?)による宍道湖及び中海の紹介 
ix. 九重町長(九州)によるくじゅう坊ガツル・タデ原湿原の紹介
x. 釧路開発建設部治水課流域計画官大束氏による釧路湿原再生事業の報告
 釧路湿原の治水上の重要性に言及、現在100ヶ所で地下水位の測定を行っており、得られたデータは今後の再生事業に活用されると述べた。
xi. 「国際湿地保全連合日本」辻井会長による日本の登録湿地の将来展望
   技術移転の必要性を強調。
xii. 柳井俊郎氏による経団連自然保護基金及び積水化学の環境関連事業の報告
xiii. 中村女史によるラムサールセンターの活動とアジア湿地シンポジウムの説明。
xiv. 呉地氏による「水田と水鳥」に関する報告。宮城県では90年前に湖沼は40ヶ所あったが、今は9ヶ所のみであると報告。

(3)アジア地域会合(午後3時〜6時)
 アジアの締約国政府代表が集まって、アジア地域共通の観点から提案された決議案を議論。しかし時間不足で予定されていた決議案すべてを議論することが出来なかったので、翌日朝9時から1時間、本会議の前に議論することとなった。

第四日目:11月11日(金曜日)

(1)アジア地域会合(9時〜)
 条約事務局のアジア上級アドバイザー雷(Lei)氏:「アジアには財政支援のイニシアティブがない。新熱帯地域には米国が提供する「Wetlands for Future」が、アフリカには「Swiss grants for Africa」がある。さらに両地域は、SGFからかなりの支援を得ている。
 他の地域がSGFからの支援を多く得ているのは、申請の仕方や申請書の質に問題があると前に議論したことがあるという指摘に対し、雷氏は「アジアからのSGF申請書の質はここ2〜3年でかなり向上した。」と述べる。
 またWIのTaej氏は「アジア担当者はアジアにいた方がいいのではと前にも提案したことがある。もう一度考えてみるべきかも」と提案。これに対し雷氏は「オセアニア担当者はサモアに位置している」ことを指摘した。

(2)本会議 午前の部(10時〜)
 この日の本会議は地域別の取組に関する「決議案8(改訂版1)」についての議論から始められた。この中で「地中海湿地イニシアチブ」に関する財政支援が議論された。
 次に魚類資源に関する決議案4 が議論された。しかし、付属文書の内容に問題があるという指摘が相次ぎ、議論は持ち越された。
 国際環境条約間の協調(synergies)に関する「決議案5」では、米国が「ラムサールの加盟国すべてが他の環境条約の加盟国であるとは限らない。米国はCBD加盟国ではないのでこの点からもこの内容には同意できない」と表明した。
 「決議案6(国境をまたがる湿地保全のための協力について)」では、国境の問題は政治的にセンシティブなので、持ち帰って検討したい、それゆえ次回COPまでの持ち越しとさせてほしいという意見が何カ国かから表明された。

(3)サイドイベント
 WI主催の「湿地研修に求められる内容」に関するサイドイベントに参加。ラ条約の地域ごとに分かれて、ミニワークショップを実施。アジア地域で湿地管理担当者のための研修の機会はいくつかあるが、その中で特に力を入れるべきことは何かが議論された。生物学的背景を持っている担当者が多いので、社会経済的分野におけるトレーニングと普及啓発活動についてどのように実施するのが効果的か、といった指摘がされた。

(4)本会議 午後の部(午後3時〜)
 登録湿地選択のための基準についての「決議案7」の議論から始まる。この決議案は何らかの事情で基準に合致しなくなった湿地、あるいはもともと基準に合致していなかった湿地(基準は条約の最初からあったわけではないし、時代とともに変わってきた)の扱いに関するものだ。数カ所の訂正を認めて、決議は採択された。
 次の「決議案10」は自然災害に関するものだが、これは2004年12月に東南アジア地域に大きな被害をもたらした津波と、防波堤の役割を果たす沿岸域の湿地保全との関係を重要視したのがそもそもの発端であった。マリ政府代表は「洪水、干ばつ、イナゴ、侵入植物等の問題も考慮に入れてもらいたいと述べ、泥炭地の大規模火災もと述べたインドネシアに続いて、スリランカ代表は「政府がマングローブ林の重要性を改めて認識した」と述べた。さらに、パキスタン政府代表は「パキスタン北部の地震は山岳湿地に大きな影響を与えた。この点にも言及して、我が国が国際的な支援を得られるようにしてほしい」と述べた。様々な要因が入ってきたので、これも議論は持ち越しとなる。
 このように議論がまとまらない場合は、調整グループが形成され、特定の政府代表を中心に水面下で議論が行われ、本会議に改めて報告されることになる。

 次の「決議案11」は日本語ではほとんど影響がないが、これまで条約事務局を示す用語として用いられてきた"Bureau"の代わりに "Secretariat"を用いた方がいいだろうということから提案されたものだ。[注:例えば日本各地にある大きな会議が行えるようなイベント施設の運営に当たる担当事務所も"Convention Bureau"と英語表記される。幕張の施設の事務所も"Makuhari Convention Bureau"となる。この場合のConventionは条約の意味ではなく、単に会議場を示している。]
 STRP(科学技術検討委員会)の運営方針に関する「決議案12」について、日本政府代表は「メンバーの選考に当たっては、加盟国政府と協議をするように」要請した。
 ラムサール信託基金についての「決議案13」議論の後、アフリカで最初の締約国会議である今回のテーマと結びついた、貧困対策(Poverty reduction)に関する「決議案14」の協議に入った。この中で、日本政府代表は「我が国のJICAはいろいろな国で湿地プロジェクトを実施している。そのため、この決議案の中で提案されている『新しい機構』は必ずしも必要ないと考える」と意見を表明した。
  • [注:個人的な意見だが、確かに最近ではJICA湿地保全に関するプロジェクトを実施しているのだが、一方で従来型の湿地破壊(に結びつきかねない)開発事業も続けている点が問題だろう。これは我が国に国として湿地に関する明確な政策(方針)がないため、右手で破壊、左手で保全というちぐはぐな取組になってしまっているのではないだろうか。]
 付属文書として4ヶ所の事例が報告されていたが、アフリカからさらなる事例にふさわしいはずだと新たな事業が紹介されると、条約事務局長は「おそらく他にもいい例はいくつかあるだろうから、事例報告の付属文書なしで採択するのが今回は適切なのでは」と修正案を提案した。
 次に、かなり重要な文書かも知れない「登録湿地の状態」に関する「決議案16」が説明された。WWFは「前回の締約国会議開催国スペインでは、政府が進めているダム計画が大きな問題になり、その後スペイン政府が約束したように積極的な協議が行われている。この点についても決議に含めてはどうか。また、残念ながら今回ギリシャ代表団は参加していないが、ギリシャの登録湿地に関しても言及されるべきだろう」と発言した。
 またガーナ政府は「湿地の環境悪化を監視する『早期警戒システム』の考え方を提案し、WIはガーナの提案を支持、次回COP10での決議に持ち込んではどうかと発言した。
 次にアルゼンチンは、条約事務局が問い合わせを行うに当たって「第三者からの情報」はどのように処理されてきたのか説明を求めた。この発言をオーストラリアも支持した。しかし、他にも様々な意見、質問、提案があり、事務局からは回答がないままこの日は終了。
 話題が少しさかのぼって、国境を越えた湿地保全に関する「決議案6」に関連して、そのような事例のリストを次回COPで参照できるようにしてはという意見が出された。また、鳥インフルエンザに関する文書は新たな「決議案25」として改めて採否を討議することになる。まだ決議案がたくさん残っていることから、予定のプログラムを変更して、朝からは本会議、午後から午前中に予定されていた専門会議と午後の分とを並行して開催することとなった。明日朝からは、「決議案17」の協議から開始することを確認して本会議は終了した。

>>後半:2005年11月12日〜15日