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市川市は人工干潟計画を中止せよ

─シンポジウムに130人─


 猫実川(ねこざねがわ)河口域は三番瀬の浦安寄りに位置する海域である。三番瀬7団体は、千葉県がこの海域で打ちだした人工干潟造成計画を2016年に中止させた。15年間におよぶ運動の成果だった。ところが、こんどは市川市が同じ海域で人工干潟造成を強行しようとしている。三番瀬保護団体は(2025年)3月30日、人工干潟計画の中止を求めるシンポジウムを市川市文化会館で開いた。大会議室が超満員となる130人超が参加した。

「市川市の人工干潟計画にストップを!」と銘打ったシンポジウムに130人超が参加=2025年3月30日、市川市文化会館

*残っている干潟・浅瀬の保護が大事

 人工干潟計画の規模は幅100m×奥行き50m。事業費は、造成費だけで3億5000万~7億5000万円。ほかに土砂補給などの維持管理費がずっとつづく。

 田中甲・市川市長は「手を加えることによって自然を再生する」を強調している。しかし、自然は人間の思いどおりにはならない。実際に人工干潟の成功例はない。環境省の野生生物課も、市川市の人工干潟計画についてこう述べている。 「人工干潟の成功例は把握していない」「貴重な干潟や浅瀬をつぶして人工干潟をつくることの必要性は理解できない。人工干潟をつくることよりも、いま残っている干潟や浅瀬を保護することのほうが大事だ」。

 三番瀬団体は市川市に対し、多額の市税をつぎ込んで疑似自然をつくるのではなく、いま残っている貴重な三番瀬を保護することに力を注ぐよう求めている。3月28日は、計画中止を求める要望書を市長あてに提出し、担当部署(行徳支所)と交渉した。

*三番瀬をこれ以上つぶすな

 田中市長は人工干潟造成の目的についてこうも述べている。「人間が破壊した自然環境を私たちが取り戻す」。しかし、埋め立てによって市川市行徳地区の干潟や浅瀬を破壊し、市民から海を奪ったのは市川市である。

 かつて、行徳地区の海岸は新浜(しんはま)と呼ばれ、広大な干潟や浅瀬が広がっていた。国内最大級の野鳥の生息地だった。その干潟や浅瀬を市川市が埋め立てた。

市川市が自然の干潟・浅瀬を埋め立てた区域

 市は、現在「行徳鳥獣保護区」となっている海域もそっくり埋め立てる予定だった。しかし、この海域は埋め立てを免れた。昭和天皇が当時の友納武人千葉県知事にこう要請したからだ。「市川市の行徳海岸にある新浜御料場(鴨場)の前面を埋め立てるそうだが、干潟は渡り鳥の餌場なので注意するように」。

 友納知事が市川市長を説得し、この海域は埋め立ないことになった。そのいきさつは友納知事の回顧録にも書かれている。

 市川市の市長や担当部署の職員はこうした史実を知らない。行徳支所との交渉で、支所は「行徳地区の海岸を埋め立てたのは千葉県だ」と述べた。事実を示してその間違いを指摘したところ、「あとで調べる」と答えた。

 シンポでは、参加者からこんな意見がだされた。

「私は市川市史の編纂委員を務めていた。市史の自然編には、市川市の自然がいかに豊かであるかが目一杯つまっている。市長は、市が刊行した市史の自然編や民俗編をしっかり学習してほしい」

JR総武線の本八幡駅前で人工干潟計画中止を求める署名を呼びかける三番瀬保護団体のメンバー=2025年2月22日

JAWAN通信 No.151 2025年5月20日発行から転載