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辺野古新基地の工事は今…、進む環境破壊

辺野古土砂搬出反対!首都圏グループ/環瀬戸内海会議役員   
若槻武行

◆那覇市長選の敗北を乗り越えて

10月23日投開票の那覇市長選は、辺野古新基地建設反対を貫き「子育て日本一の那覇」を訴えた「オール沖縄」の新人・翁長雄治氏(35)が敗北した。当選は自民党・公明党推薦で前副市長の知念覚氏(59)。今選挙は、相手側の潤沢な資金を背景に、例えば全面カラーのチラシ(種類の多さ・地域毎のチラシ・配布態勢)、終盤での企業動員のスタンディングの個所、数の多さが目立った。いわゆる日本政府をバックにした圧倒的な総動員の組織選挙には勝てず、また低投票率での戦いだったが、それでも1万票超程度の差で善戦が光った。我らの翁長氏は前沖縄県知事の息子で日に日に成長し、氏の話を聞いてきた支持者は今後への期待を膨らませている。

翁長氏を支えてきた沖縄平和市民連絡会は今、「沖縄を再びいくさば(戦場)にさせない」の一点で、さらに強固な大同団結を固め、辺野古新基地建設に反対し、珊瑚礁の海の環境破壊を阻止する戦いの強化を図っている。

◆設計変更~不承認~その取消

政府・沖縄防衛局は辺野古新基地「設計変更」を沖縄県に出したが、県はその「設計変更」を「不承認」とした。すると政府=沖縄防衛局は、その「不承認」を不服とし、本来は国の政策に対し私人の権利侵害救済が目的の「行政不服審査制度」を悪用し、政府の身分の国交省から「不承認」処分の「取消」裁決を採り、さらに設計変更承認を県に迫る「是正指示」まで出させた。沖縄県はこれらの国土交通相の「取消」裁決が不当と、福岡高等裁判所那覇支部に提訴。ただ、この間の裁判の判決は国の主張を認める不当な判決が続いており、裁判闘争は厳しいと予想される。

◆遺骨混じり土砂で岸の埋め立て

政府の「設計変更」では、沖縄本島の南部の、先の沖縄戦戦没者の遺骨混じりの土砂を埋立てに使うことも含まれていて、多くの批判が出て各自治体の、意見書採択が行なわれている。意見書決議を行った府県・市区町村自治体は、この秋、7自治体増えて、沖縄県内31、県外194、合計225となった。(決議自治体名は資料1、都道府県別戦没者数は資料2を参照)



◆台湾有事の敵基地攻撃に備える

辺野古新基地建設とその背景にあるものについては、これまで何回か報告してきた。その要点を再度確認しておきたい。

政府は安倍政権以来、憲法9条を骨抜きにし、戦争準備をエスカレートさせている。敵基地攻撃(先制攻撃)は、九州南端・奄美群島から台湾に隣接する与那国島へ連なる「琉球弧」への自衛隊ミサイル基地を強化し、米軍との共同作戦が現実味を増している。しかし、ウクライナ侵略戦争でも判るように、戦争は破壊と不幸しかもたらさず、一度始めると止めることができない。

日米の戦争準備の「要」となるのは「辺野古新基地」である。沖縄本島の米軍機基地は、復帰前の被占領時代から米軍が島面積の約15%を占有している。日本の全国土面積の約0.6%だけの沖縄県に、日本国内の米軍専用施設や基地の全面積の70%超が集中している! さらに陸上だけでなく、海域も計55k㎡(九州の約1.3倍)、空域も計95k㎡(北海道の約1.1倍)が米軍管理下にあるのだ!

◆うそで固めた新基地建設

辺野古新基地が「普天間基地の代替」と言うのは「うそ」。滑走路が2本、大型ヘリ空母の岸壁、弾薬搭載場等を増設した巨大な「新基地」だ。最初は計画の一部だけ示し、環境への影響は少ないなどと言って、沖縄県を騙し承認を取り、後で大幅に変更する。防衛局は、西側のサンゴ礁の浅瀬を簡単に埋立てたが、それは工事全体の1割程に過ぎない。

現在進めている工事は、①辺野古側の埋立て工事で、全体の10%の土砂投入、②N2の土砂陸揚げ護岸造成、③美謝川切替、④K8護岸(既設:250m、今回は190m)、⑤弾薬庫の商用車用ゲート造成、⑥送電線地中化工事。この状態では、まだまだ延期し、費用はふくらみ、環境破壊は進むことになるだろう。

防衛局は軟弱地盤の調査データを得ていたが、それを隠し、情報公開は18年、軟弱地盤(後述)を認めたのは19年1月と遅い。「辺野古調査団」(代表:立石新潟大名誉教授)は2010年2月、「琉球海溝付近で起ったM7.2の地震を無視している。活断層で地震時に護岸は震度1~3で崩壊する」と指摘したが、防衛局は無視を続けている。

◆基地は頓挫、進む海の環境破壊

変更申請では、環境保全で沖縄県が指摘した問題を殆ど無視している。沖縄防衛局は埋立て予定地の地盤強度のボーリング試験を多くの地点で実施したが、何故か、最も重要な軟弱地盤のB27地点では行なっていない。

東側の大浦湾の深場は難工事だ。工事はこの深場の埋立てから始める予定だったが、この海域の水面下30mの海底の下30~60m(水面下から60~90m)がマヨネーズ状の軟弱地盤が判明。その地盤改良のため直径1~2mの砂杭7万本を打ち込むという。だが、日本の設備・技術では60mが限界。そこから下90mまでの砂杭は世界でも経験がない。技術的には無理がある。

新基地の予定工期は12年。それまでの完成は無理。本来ならこの2022年に工事完了となる当初計画が2030年に延び、まだ延びるだろう。今のところ費用は2310億円から9300億円に拡大。それよりもっと増えるだろう。

それに伴い、大浦湾の環境破壊は甚大となる。完成後の地盤沈下も確実と言われる。沖縄県の関係者や専門家の多くは「防衛局は大浦湾側の工事ができず、埋立て工事全体を完成させる見通しが立たない。埋立て工事が周辺環境に与える影響は甚大であり、かつ不可逆的であることから、事実上無意味なものとなる可能性がある」「新基地は頓挫する」と言っている。

しかし、それでもまだ工事を続け、予算消化しようとしている。それの伴う環境破壊は計り知れないのだが。


JAWAN通信 No.141 2022年11月30日発行から転載)