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■石垣島シンポジウムの講演(要旨)

石垣島の水調査

アンパルの自然を守る会幹事、サンゴ礁基金理事 干川 明さん

写真5-1

本土復帰によって、パスポートがなくても本土から沖縄に来られるようになった。そこで沖縄に来た。はじめは沖縄本島だった。もっと南のほうに行けばさらにすばらしいところがあると聞いたので、石垣島に渡ってみた。自然や風土、生活がたいへんすばらしい。それ以来、石垣島に住みつくようになった。41年前の35歳のときだ。ずっと農業を営んできた。

石垣島と西表島のあいだに日本最大規模のサンゴ礁がある。石西礁湖と呼ばれるサンゴ礁だ。このサンゴ礁も陸地からの影響をうけ、状態が悪くなっている。その対策にかかわっている。

アンパルの近くにある嵩田地区で一軒家を借りて住んでいる。主に田んぼでコメをつくっている。わたしが農業をはじめたころは田んぼが深かった。船に乗って作業したり、水牛を使ったりした。

そのころはブネラ湿原という大きな湿原があった。その一部が水田となっていた。大雨が降ると、3日も4日も道路がみえなくなることがある。大きな湖のようになった。

当時は人工的な浦田原排水路はなかった。そのため、湿原の何割程度しか田んぼにできなかった。多くは水牛の運動場や湿原になっていた。そのかわりに自然は多く残っていた。いまは基盤整備されて田んぼになっている。

アンパルの自然を守る会は、水路の水温と水質を測定した。製糖工場、マングローブ林、草原の5カ所を選んで測定した。工場の排水口から1秒間に200リットルぐらいの水が流れだしている。そこからコンクリートの水路を流れる。草地(湿原)に入ると、素掘りの土水路の中を流れる。最後は干潟に流れこむ。

製糖工場は毎年12月19日ごろに操業をはじめる。そうすると高温の水がではじめる。35~40℃ぐらいだ。干潟に突入するところまで流れると、5℃ぐらい下がる。干潟のいちばん外側は干潮域だ。水がいったりきたりするので、水温が一日に2回変動する。外の水温にくらべて5~10℃ぐらい水温が高くなる。これが生物にたいしてどのような影響をあたえているかも調べなくてはならないと考えている。

水質も測った。栄養塩とされるチッソとリンである。これがサンゴの海に流れこむとサンゴの生長に大きな影響がある。名蔵川や宮良川のような大きな川になると、上流はチッソやリンの濃度が低く、栄養塩も少ない。

製糖工場の排水は、リン酸の濃度が非常に高い。アンパルに流れこむ水路も工場排水路とあまりかわらないところがあったりする。源流にくらべるとリン酸の濃度が高い。

では、どうすればいいのか。環境省が保有している草地の中をまっすぐ流すのではなく、遊水地をつくったり迂回路をつくったりして、そこに赤土も溜めるようにする。リン酸などの赤土有機物や栄養塩を回収することが必要である。

沖縄県も自然再生事業を計画しているとのことだ。なんとかそのような事業をめざした

(JAWAN通信 No.127 2019年5月30日発行から転載)

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