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■辺野古集会の講演要旨

辺野古の工事、いまどうなっている?

沖縄平和市民連絡会 北上田 毅さん

写真2-4

 辺野古新基地建設の問題で昨年12月13日、防衛省交渉と院内集会が参議院議員会館でひらかれました。集会では北上田毅さんが「辺野古の工事、いまどうなっている?」と題して講演しました。以下はその要旨です。(『JAWAN通信』編集部)

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辺野古新基地建設工事の問題点を指摘し、防衛省(左)に基地建設中止を要請=2017年12月13日、参議院議員会館
写真1-2
防衛省交渉の前にひらかれた院内集会

*「本体着工」はウソ

 2017年4月25日から大浦湾でK9護岸の工事がはじまった。11月は辺野古側でK1護岸とN5護岸の工事がはじまった。K1護岸は埋め立て区域の南西側の外枠となる。N5護岸は内側を仕切るものである。
 沖縄防衛局は、大浦湾のK9護岸100mの工事を「本体着工」とはなばなしく宣伝した。だが、この工事は仮設工事として発注していた。それは防衛局にたいする情報公開請求によってあきらかになった。
 K9護岸の100mは海上輸送した石材を積み上げるための桟橋として使う。それは当初から想定されていたと思われる。したがって本来なら、埋め立て承認のさいの留意事項にもとづく環境保全図書の変更として知事の承認が必要となる。沖縄県もそれを再三にわたって指摘している。ところが防衛局は、「当初からつくっていたK9護岸工をそのまま使っているだけ」と言っている。

図2-1

*県民のあきらめを誘うため、やりやすいところから工事

 沖縄防衛局はいま、辺野古側のK1護岸とN5護岸の工事をすすめている。これにたいし、カヌーのメンバーが懸命に工事阻止行動をつづけている。しかし、あたり一面にフロート(浮具)が何重にもはられていて、なかなか中に入れない。入ったとしても、中で海上保安庁がまちかまえている。カヌー1隻にたいして5、6人乗った海保のボートが向かう。このように阻止行動はきびしい状況がある。それでもみんながんばっている。フロートをこいで懸命に阻止行動をつづけている。
 辺野古の側は水深が浅いので作業がやりやすい。だからいま、K1護岸の工事がどんどんすすんでいる。これは、前述のように本来の工程とまったく変わっている。
 本来の工程は、大浦湾のA護岸の工事からはじめるはずだった。ところが、辺野古側のK1護岸のほうに工事が移っている。その背景には、岩礁破砕の問題をめぐって沖縄県が工事の差し止め訴訟を起こしたことがある。致命的な岩礁破砕工事を防衛省が控えている。
 そのかわりに本来の工程をまったく無視し、やりやすいところから順次手をつけている。「護岸工事が辺野古側でもどんどんすすんでいる」「反対しても、もうおいつかない」──。そういうかたちで沖縄県民のあきらめを誘う。それがいまの工事の状況である。

*連日の座りこみ行動が大きな効果を発揮

 私たちはゲート前で懸命の座りこみ行動を毎日つづけている。それにたいし、防衛局はとんでもない暴力で強制排除したり、参加者を閉じこめたりしている。その目の前を石材を積載した大型ダンプがどんどん入ってくる。みんなは泣きたくなるような思いをしている。
 しかし、この座りこみ行動は大きな効果を発揮している。2017年9月28日に防衛省と交渉したとき、防衛省の担当者はこうのべた。
 「業者にしてみると、自分たちのペースで資材を搬入することができない。仕事にならない」
 沖縄防衛局は「工事は着々と進行している」と強がりを言っている。しかし、予定どおりには石材を運びいれていない。このままではいつまでかかるかわからない。そのため、海上搬送に切り替えた。沖縄県に提出した書類では石材を陸上搬送すると明記していたのにである。このように、全国の支援者のかたがたによる座りこみの力によって、防衛局は大幅な計画変更をよぎなくされている。

*ジュゴンなどへの影響

 石材の海上搬送も問題になっている。石材は護岸の捨て石や護岸の下の栗石などとして使用するもので、150万立方メートルが必要となる。
 防衛局は、沖縄本島の最北端を通る北回りルートで石材の海上搬送をはじめた。この北回りには二つのルートがある。ひとつは国頭村の奥港からの積み出しである。もうひとつは本部港からの積み出しだ。
 北回りルートの海域ではジュゴンやウミガメがひんぱんに確認されている。防衛省の発表でも、2017年の8月25日から9月30日にかけて、ジュゴンの鳴き声が197回も確認されている。この海域で石材を積んだ台船の走行がつづくと、ジュゴンなどに大きな影響をあたえる。
 防衛局は、埋め立て承認願書に添付した環境保全図書に、「ジュゴンが頻繁に出現する場所では海上航行を基本的には避ける」と明記している。したがって、本来は、ジュゴンがひんぱんに確認されている海域を通る北回りで海上搬送することはありえない。それなのに、このルートで石材を搬送している。
 このように新たな問題がつぎつぎと噴出している。そういうことについて、防衛局は環境等監視委員会になんの説明もしない。委員会もなんの指摘もしない。こういうことがまかりとおっている。

*奥港の岸壁使用を知事が許可

 国頭村の奥港を石材の海上輸送に使うと奥地域の静かな環境が破壊される。そのため、国頭村奥区は11月23日の区民総会において、海上運搬のための奥港使用に反対する決議を全会一致であげた。
 ところが、奥港を管理している沖縄県は奥港の岸壁使用と港湾施設使用を許可してしまった。このことについて、辺野古のゲート前の基地反対行動に参加しているメンバーのあいだでは混乱がおこっている。
 知事は「沖縄県政の最大の柱は辺野古新基地建設を阻止すること」を掲げている。それなのになぜ、埋め立て用石材海上搬送のための港の使用を許可したのか。県民のあいだでは戸惑いと動揺がおきている。
 先日、この問題で県と交渉し、県の姿勢を追及した。いろいろな団体・グループが、県がだした奥港の使用許可の取り消しを求めて動いている。
 ところがこんどは、台船の給油や乗組員の休憩などのために中城港の岸壁を使うことを沖縄県が許可した。中城港は沖縄本島の中部の東海岸にある大きな港である。

*絶滅危惧種サンゴ

 14群体のうち13群体が死滅
 
 沖縄防衛局は沖縄県への回答文書(2017年6月12日)で、移植予定のサンゴ類は、護岸部で7万3870群体、埋め立て部で457群体の合計7万4327群体と説明した。ところが、その後も絶滅危惧種のサンゴが発見されている。
 防衛局は6月26日から9月18日にかけて、辺野古側海域のK1護岸とN5護岸のあいだでサンゴの生息状況を調査した。調査によって絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ2群体と準絶滅危惧種のヒメサンゴ12群体を発見した。沖縄県が防衛局にたいして再三にわたりサンゴの移植問題で照会していたときだった。
 ところが防衛局は、絶滅危惧種のサンゴを発見したことを県に報告しなかった。県に報告したのは9月28日である。その間に14群体のうち13群体が死んでしまった。残ったのは、オキナワハマサンゴの1群体だけである。そのような状態になってはじめて県に報告した。
 本来は、絶滅危惧種のサンゴがみつかった場所では海上工事を中止すべきである。しかし、防衛局はK1護岸とN護岸の工事続行をぬけぬけと言いつづけている。
 防衛局は絶滅危惧種のサンゴを死滅させている。私たちは前々回の防衛省交渉からこの点を追及している。サンゴの移植はあくまでも事業実施前におこなうのが当然である。工事がはじまってからでは、海がどんどん汚濁されるので間に合わない。防衛局がだしていた文書でも、事業開始前に移植することになっていた。ところが、防衛局はそれを実行しない。

*活断層の可能性

海底断面図

 大浦湾の海底には活断層が存在する可能性が高い。これも大きな問題である。
 図2は新基地建設予定地の海底断面図である。防衛庁(現・防衛省)が2000年に作成した。
 図でわかるように大浦湾の海底には深い落ち込みがある。60mぐらい急に深くなっている。断面図を作成した防衛庁は、この落ち込みについて「断層による落ち込みと考えられる」と明記している。断面図などを分析した琉球大学の加藤祐三名誉教授(地質学)は「大浦湾に活断層が存在する可能性が高い」と指摘した(『琉球新報』2017年10月25日)。
 私たちは9月28日の交渉で、この点についても防衛省を追及した。防衛省はこう答えた。「既存文献などによると、沖縄北部において目立った活断層は確認されていない」と。
 さらに、糸数慶子参議院議員が11月15日に提出した質問主意書にたいしてこう回答した。
 「既存の文献によれば、辺野古沿岸域における活断層の存在を示す記載はないことから、ご指摘の『辺野古断層』及び『楚久断層』の2本の断層に係わるものも含め、辺野古沿岸域に活断層が
 存在しているとは認識していない。このため、辺野古沿岸域における海底地盤の安全性については問題ないものと認識している」
 これは閣議で決定した答弁書である。しかし、活断層はないということを閣議で決定することはありえないはずである。専門家などで構成する審議会ならともかく、政治家で構成する閣議でそのようなことを断定できるはずがない。
 きょうの交渉で追及したいのは、ひとつは、「既存の文献」と書いているが、どのような文献をあたったのか、ということである。もうひとつは、私たちが簡単に入手できる文献として、名護博物館の『名護・やんばるの地質』がある。この文献では、辺野古断層と楚久断層は「活構造」の断層と記載されている。また、活断層研究会が『新編 日本の活断層』(東京大学出版会)を出版している。この本では、辺野古断層と楚久断層について「陸上活断層(活断層の疑いのあるリニアメント〔確実度Ⅲ〕)」と明記されている。
 このような文献からも、「沖縄北部において目立った活断層は確認されていない」ということはありえない。
 沖縄防衛局は埋め立て予定区域において各種の調査をおこなってきた。海底の地質調査(ボーリング調査)など、これまでの調査の結果を公表すべきである。

*外来生物侵入防止対策

 辺野古埋め立て用として約2100万立方メートルの土砂を搬入する。県外からも大量の土砂を運びこむ。そのため沖縄県は、特定外来生物侵入防止策として土砂条例を制定するなどいろいろなとりくみをつづけている。ところが県外から搬入するのは岩ズリ(岩をくだいたもの)なので、石材のように洗うことができない。
 いま、西日本各地の土砂搬出地で辺野古埋め立ての土砂搬出に反対する運動を連携しながらすすめている。この運動の防衛省・環境省交渉において、奄美大島の岩ズリの実物を両省の担当者に見せ、「岩ズリを洗えば全部流れてしまう。どうするのか」と追及した。防衛省も環境省も答えられなかった。
 防衛局は2017年11月2日、沖縄県にたいして文書でこう回答した。
 「外来生物の侵入防止対策については、現在、実際の外来生物(セアカゴケグモ・アルゼンチンアリ等)を飼育等の上、当該外来生物を死滅させるための条件を試験により明らかにし、当該侵入防止対策の検討の資とすることとしている」
 この回答では、具体的になにをしようとしているのかわからない。この点もきょうの交渉で追及したい。

写真2-4
奄美大島の岩ズリ(土砂)を防衛・環境両省の担当者(手前)に見せる辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会のメンバー。「岩ズリを洗えば全部流れてしまう。どうするのか」と外来生物侵入対策を質した=2016年11月1日、衆議院第二議員会館で
(JAWAN通信 No.122 2018年2月20日発行から転載)

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