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■鎌倉広町の森を守った運動を学ぶ

自治会を基盤にした住民運動の成果

日本湿地ネットワーク 共同代表 牛野くみ子

 2016年11月23日、鎌倉広町(ひろまち)の森を守った運動の話をうかがうため8人で西鎌倉に向かいました。出迎えてくれたのは「鎌倉の自然を守る会」の安倍精一会長さんなど4人です。
 鎌倉広町の森を開発から守った運動のひとつの特徴は、「緑を守りたい」という住民の願望が強かったことです。だから絶対にあきらめない。このことが25年におよぶ運動を成功させ、緑深い森を守ったとのことです。
 運動のはじめは、森近くの住民、とくに主婦が開発の動きを察知し、自治会を基盤にして、緑地を残そうとアンケートや署名をはじめたことです。そのような運動を、時代を追って話していただきました。
 話が進むうちに、三番瀬や谷津干潟でも同じようなことをしてきたな、と思いだしました。鎌倉広町では当初、鎌倉市長は「緑を守る」と公言していました。しかし、市長はだんだんと開発側に傾いていきました。そのため、住民運動を進めるなかで緑を保全する市長候補を一本化して当選させました。
 三番瀬では、埋め立て反対運動の高まりや、30万署名に示された県民の声が埋め立て計画を白紙撤回させました。谷津干潟では、干潟を埋め立てて公共施設をつくると公言していた習志野市長が引退しました。そのあとの市長立候補者は全員が谷津干潟保全を公約したので谷津干潟は残りました。自治体の長を交代させるなど、住民の結束力の強さが運動を成功させたのです。
 近ごろは裁判に持ち込むことが目立ちます。これは開発業者や行政側の思うつぼになりかねません。訴訟では勝てないことを私たちはいろいろなところでみています。鎌倉では、市の担当者から「裁判を起こしても勝てない」「行政まかせではだめだ」「住民運動しかない」と言われ、勝利を得ました。鎌倉市はすごいな、と思いました。
 懇談会のあと、広町の森(緑地)を散策しました。初夏にはゲンジボタルやヘイケ
 ボタルが見られるそうです。ホタルが食するというカワニナもいました。ウルシの樹皮をかきとり樹液を以前採られたウルシ林がありました。無残な姿でした。人はいつでもなにかを犠牲にして生きているのです。60haの森の周囲は住宅地です。開発を止め、森を残したことは、周辺住民だけでなく鎌倉を訪れる人にも安らぎを与えます。すばらしい住民運動の成果をみせていただきました。

写真7-1
鎌倉広町の森を見学
(JAWAN通信 No.118 2017年2月28日発行から転載)

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