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貴重な森を開発から守った運動を学ぶ

〜鎌倉の自然を守る連合会と懇談〜


 日本湿地ネットワーク(JAWAN)と全国自然保護連合は昨年11月23日、「鎌倉の自然を守る連合会」と懇談しました。鎌倉広町(ひろまち)の森(緑地)を守った運動を学ぶためです。参加者は8人です。

写真5-2

*鎌倉広町の森を守った

 鎌倉広町の森は約60haの丘陵地です。鎌倉市の西南部にあります。
 豊かな生態系を誇る貴重な森を開発から守るため、住民たちは25年にわたってねばりづよく運動をつづけました。
 「市街化区域の緑地を開発から守るのはむずかしい」といわれています。しかし、住民たちは一致団結して運動を広げ、ついには政治も動かして開発から森を守りました。この歴史的な運動をになったのが「鎌倉の自然を守る連合会」です。
 運動の特徴はこうです。
① 裁判をおこしても勝てないことがわかったので、訴訟は選択しなかった。
② 自治会・町内会を基盤にした超党派の住民運動を展開した。
③ さまざまな活動の中心をになったのは、緑の近くで子育てや生活をしたいと願う女性(主婦)たちだった。
④ 署名活動を旺盛に進め、第1回では6万、第2回では12万、第3回では22万(署名協力)を集めた。(鎌倉市の人口は17万人)
⑤ 陳情、署名集め、トラスト運動、市民集会、市長選など、多彩な運動をくりひろげた。
⑥ 地元住民や鎌倉市民などにたいする広報活動をくりひろげ、世論を味方につけた。
⑦ 鎌倉市長選で「環境自治体の創造」を掲げる候補者を当選させた。
 たいへんすぐれた運動です。参加者からはこんな感想が寄せられました。
 「自治会・町内会を基盤にして住民運動をくりひろげたというのが印象的だった。これはなかなかできることではない。市長選挙で環境保全派の候補を一本化して当選させたことや、22万の署名を集めたこともすごいと思う」
 「鎌倉広町の森の約40haは3社の開発業者に買い占められていた。しかも市街化区域である。その森を住民運動によって守った。連合会のみなさんの運動に感服した」
 
 *住民が主役の運動
 
 「鎌倉の自然を守る連合会」は裁判による決着を選びませんでした。弁護士に委ねることもしませんでした。大勢の住民が主役となり、世論を味方につけ政治を動かすことによって開発を食い止めるという運動を進めました。
 運動の中心をになったのは、近隣の緑を守りたいと願う女性たちでした。
 連合会の安倍精一会長はこう話してくれました。
 「男性は会議などで理屈を並べることは得意だ。しかし実際の運動、たとえば署名集めは苦手である。地域に根っこがないからだ。男性は自宅近くの家のご主人の顔を知らない人が多い。知らない人にたいしては署名を頼みづらい。地域の運動を女性たちが支えたのは、主婦の人たちが地域のネットワークをつくっていたからだ。それがさまざまな運動に活かされた。これはすごく大事なことだと思う」
 「署名集めや市民集会、トラスト運動などは数が重要になる。議論だけでそれがうまくいくのならいい。しかし、そうはならない。運動は、最終的には数が重要だ。それを実現してくれたのは女性たちであった」
 そんな女性の一人である小野則子さんはこう語りました。
 「鎌倉駅の前で署名を訴えたとき、最初は抵抗があった。どうやっていいかわからなかった。しかし、声を張りあげているうちにだんだんと慣れていった。多くの署名を集めることもできた。ほかの自治会の地域でも一軒一軒訪ねて署名をお願いした。そういうことをつづけ、他団体からの協力も得て、6万の署名が集まった」

*113億円の財政支出を実現

 このような運動をつづけた結果、鎌倉市、神奈川県、国を動かして財政支出を実現しました。都市公園とするために開発事業者から土地が買収されたのです。財政支出は、神奈川県20億円、国20億円、鎌倉市73億円(年賦払)の計113億円です。環境への投資といえるでしょう。
 この運動は「自然や景観をどう守る」のお手本となるものです。

写真5-2
「鎌倉の自然を守る連合会」のみなさんと記念写真
(JAWAN通信 No.118 2017年2月28日発行から転載)

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