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沖縄「大嶺海岸」案内

〜那覇空港拡張予定地になっている干潟のこと〜

水間八重 (泡瀬の干潟で遊ぶ会)

 大嶺海岸は、那覇空港のすぐ西側、大嶺崎にある那覇市唯一の自然海岸です。大嶺崎から瀬長島に連なる海岸線の沖合には、礁池干潟が分布しています。面積は約410ha、広大な海草場とサンゴ礁を擁しています。今日はこの干潟をご案内します。

那覇空港拡張予定地(大嶺海岸)

 出発地点は瀬長島。
 まずは空港施設に沿って、大潮の干潮時にしかあらわれない砂浜を大嶺崎の突端目指して歩きます。晴れた日には、海岸植物の濃い緑と白い砂のコントラストが眩しいです。砂浜の下層には砂岩があって、一部が海底に露出しています。この砂岩には生きものたちの住処である様々な穴がたくさんあいていて、貝が棲んでいるのか、はたまたゴカイの仲間かと、想像をかきたてます。また、この付近では砂浜と砂岩層の境界から浸み出す水の流れがいく筋も見られます。海辺の湧水はスポット的に塩分の低い場所を生み出し、生物多様性に大きく関わっているそうです。
 龍宮神が祀られている大嶺崎で一休みしたら、いよいよ沖のリーフ(サンゴ礁域)に向かいましょう。サンゴ礫がごろごろしているところを通り過ぎると、足下からブツブツ、プチプチとたくさんの音が聞こえます。貝やエビ・カニ、ゴカイの仲間たち。それぞれがそれぞれのいのちの音を響かせています。
 海草場の海草も元気で、水が澄んでいて気持ちがよいです。ここにも様々な生きものたちがかくれんぼ。ある冬の夜、ウミホタルがとてもきれいでした。その日は友人たちと、寒さに動きが鈍った小魚を手づかみで捕ったりもしました。春先にはモズクもたくさん採れます。
 海草場より一段高くなっているリーフに到着です。潮だまりには色とりどりのマイクロアトールがたくさんあります。30 万都市・那覇を護るサンゴ礁は、生きているのです!付近には、やっぱり生きものたちがいっぱい。

生きている大嶺のサンゴ礁
生き物がいっぱい。シラヒゲウニを獲る人

 カラフルな魚たち。奇抜な色・柄・形のウミウシたち。縞模様のウミヘビ。赤や黄色のイソギンチャクもゆらゆら揺れて、何を見てもワクワクします。
 以前ここでシラヒゲウニを獲っている人と会いました。1時間程でトロ箱がいっぱいになったそうです。そのまま持ち帰ると重いので、殻の一部を割り、食用にならない部分を洗い落としているところでした。
 生き物観察に夢中になっていると、あっという間に時間が過ぎます。静かだったリーフエッジで、急に大きく波の砕ける音がします。潮が満ちはじめた瞬間です。生物たちにとってはつらく乾燥した時間のおわり。わたしたちは岸にもどる時間です。
 リーフを離れて、帰りは直接、瀬長島を目指しましょう。海草場を抜けると細かい砂地になりました。くるくると回りながら砂に潜るミナミコメツキガニが棲んでいます。
 左手、大嶺崎の奥に白く輝いて見えるのは那覇空港のターミナルビル。着陸態勢に入った飛行機が、干潟に向かってくるように見えます。新設の滑走路はまさにリーフと海草場を縦断して建設される予定です。 
 今日も那覇空港にはたくさんの観光客が到着していますが、同じ海へ行くのなら、人工ビーチではなく生きている本物の海を見てほしい。空港の目の前には、こんなに素晴しい海が広がっているのに……! 
 ご案内したとおり、大嶺では海岸から沖合まで連続した環境が存在しています。
 変化に富んだ底質環境は、リーフに護られ安定的に存続してきました。だからこそ多様な生物がいるのです。例えば貝類は、179種の生息が確認されています( ※)。滑走路が建設されれば、貝類に限らず種の多様性は大きく低下するでしょう。
 那覇空港における全発着回数の約2割は自衛隊機が占めています。自衛隊機の緊急発進やトラブルによる民間航空機の発着遅延や空港閉鎖、またニアミスも発生しています。

着陸航空機が向かう那覇空港

 那覇市議会が国の関係当局に度々意見書を提出しているように、那覇空港を民間専用にすれば、定刻運行・安全確保の他に、滑走路増設の目的である「観光ピーク時の混雑緩和」も図れます。大規模な埋立を伴う滑走路増設よりも良案と思われますが、いかがでしょう。

 ※名和純.2009.琉球列島の干潟貝類相
(2)沖縄および宮古・八重山諸島.西宮市貝類館研究報告第6号
(JAWAN通信 No.104号 2013年2月15日発行から転載)

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