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COP10/MOP5 開催地住民からのアピール(要約)

 我々、生物多様性条約第10 回締約国会議の開催地である愛知・名古屋の住民は、生命の多様 性の急速な減衰の危機に立ち向かっている全世界の人々に、生命とその多様性を脅かしている 万物の商品化、大量生産・大量消費・大量廃棄のグローバル化の流れ、そしてそれを支えてき た近代合理主義の猛省を促す協力をよびかけるものである。

編者:武者小路公秀、駒宮博男、大沼淳一、羽後静子

1. 開催地:愛知名古屋・伊勢三河湾生命流域圏

 開催地である愛知名古屋は、世界でもま れなる豊かな環境条件に恵まれた伊勢三河湾 生命流域圏に属しているが、行き過ぎた経済 成長路線を採用したために、経済成長の「恩 恵」に属する下流の都市と、過疎化する川上 の限界集落に分断され、生物多様性の危機、 「ヒト」の生活文化の危機を迎えている。生 命流域で分断されたものを再び結びつけるた めに、生物資源の適正規模の交易を中心とす る農村と大都会、流域圏内外の農業や漁業と 商業の連帯、女性と男性がともに担い手とな る生活中心の経済の展開を提案する。

2. われわれが失いつつあるもの、そしてわれわれが奪ったもの

 日本は、宝の山である農地、林地を顧みる ことなく、海外の自然資源に頼ってしまった。 OECD 諸国の中で、例外的に食、木材の自給 率が低い事実をみると胸が痛む。したがって、 われわれ日本人が先ずなすべきは、世界の生 態系・生物多様性、そしてそれを保持してき た世界の地域住民に対する謝罪である。

3.「グローバリズム」「経済成長主義」とその帰結としての「南北問題」

 南北問題の解決、生命流域の再生、ジェン ダー平等、生態系の回復をめざすためには、 生命の多様性を守っている生存経済をもう一 度見直し、再評価すべきである。
 同時にグローバル化する市場経済ではなく、 地域で循環する市場経済と「生存経済」の共 存の道を模索するべきである。

4. 誰が生物多様性を守ってきたか、そして誰が守るべきか

 生物多様性の最大のステークホルダーが地 域住民とするならば、生物多様性の保持は、 「補完性の原則」に則って行われるべきであ る。自治体、国家、企業などは、生物多様 性保持に関する二次的ステークホルダーであ り、地域住民の保持活動を補完するセクター として徹するべきである。生物多様性の主役 はあくまでも地域住民であり、国家や国際社 会はわき役に徹するべきである。

5. 生命とその多様性を守るべき「哲学」とは何か

 日本における里山生態系は、ヒトと祖先、 そして地域の神々によって守られてきた。今、 こうした地域コミュニティ、地域の生態系を 共有財産として持続的に管理してきたガバナ ンスである「コモンズ」は世界的に消滅の危 機に瀕している。
 開催地住民として、先住民族と伝統的ロー カル・コミュニティはじめ、アジア、アフリ カ、ラテンアメリカの人々とともに、もう一 度「自然とともに生きる知恵」を取り戻すた めに連帯を呼び掛けたい。

(JAWAN通信 No.98 2010年12月10日発行から転載)

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