大阪南港野鳥園が
シギ・チドリネットワーク登録地に

高田 博(南港グループ96代表)

 大阪南港野鳥園(大阪市住之江区、管理:大阪市港湾局)は、約1000haの南港埋立地に造成された湿地で、護岸を介して大阪湾に面しています。総面積は19.3haで、12.8haの湿地エリアと6.5haの植栽エリア(3つの観察所を含む)からなります。

 1983年の開園から今年9月で20周年となるのを機会に、昨年より大阪市港湾局にシギ・チドリネットワークへの参加要請を地元NGOが行ってきました。そして、今年3月の大阪市会で、大阪市港湾局が正式な参加を表明しました。申請書類の最終審査の結果、7月21日付で大阪南港野鳥園のシギ・チドリネットワークへの参加が正式に承認されました。東アジア・オーストラリア地域では33番目、国内では6番目の登録地です。8月20日には大阪市がプレス発表、9月28日は授与式と市民参加の記念イベントを実施します。

▲今年の7月27日に実施した、夏休み子供ボランティアでのアオサ取り風景(北池干潟/大阪南港野鳥園)   ▲干潮時の北池干潟(大阪南港野鳥園)


南港野鳥園ができるまで

 大阪湾岸の湿地は埋め立てによって次第に消滅し、1980年代には、シギ・チドリ類や多様な生物が生息できる湿地はほとんどなくなりました。こうした状況下で、1933年から工事がはじまった南港埋立地は、大阪湾岸におけるシギ・チドリ類の大規模渡来地となってきましたが、造成が完了すれば、木津川と大和川に河口干潟があった頃から、ずっとこの辺りに渡来していたシギ・チドリ類の居場所が消滅するのは明らかでした。

 そこで、シギ・チドリ類をはじめとする渡り鳥の環境を残そうと、地元NGO「南港の野鳥を守る会」が1969年1月に発足し、同年、守る会は、他団体とともに、陳情書「大阪南港に野鳥公園を設置せられたし」と数千人の署名を大阪市長と大阪市会に対して提出。そして、1971年3月には大阪市長より野鳥園設置決定通知を受けました。

 野鳥園開園の翌年に解散した「守る会」発行の冊子「大阪湾にシギ・チドリの楽園を」をスローガンに、南港野鳥園での湿地再生への長い道のりがはじまりました。

南港野鳥園の湿地再生への道とシギ・チネットワーク参加

 開園から20年間、シギ・チドリ類の渡来地としてだけでなく、多様な生き物が棲む湿地をどうすれば自然の力でよみがえらせることができるのか、どうすればヒトの力でマイナス要因を除けるのか、地元NGOと行政が協力しながら試行錯誤を繰り返してきました。その結果、ここ数年でやっと湿地として安定した環境が再生されてきたと感じています。シギ・チドリ類はこれまで49種が渡来し、コチドリ、シロチドリ、トウネン、ハマシギ、キアシシギなどが多いのが特徴です。干潟の生き物も100種あまりが確認され、大阪湾岸での稀少貝類のウスコミミガイやナギサノシタタリも生息する貴重な環境となっています。

 湿地環境の保全や再生にはマニュアルなどありません。あくまで南港野鳥園独自のやり方で、注意深く環境の変化を見ながら、愛情を持って続けるしかありません。とくに、人工湿地の場合には維持管理への配慮は欠かせません。野鳥園にはレンジャーが不在ですが、環境監視や行政への提言の役割は、地元NGOの南港グループ96(1996年発足)が行っています。メンバーは、野鳥だけでなく多くの分野のアマチュア、在野研究者、大学研究者など、この湿地再生の活動に協力していただける方々で構成されています(約60名)。

 今回のネットワーク参加を機会に、シギ・チドリ類の貴重な中継地としてはもちろん、都会の市民や子ども達が保全作業や観察会に参加しながら、海や干潟のこと、シギ・チドリ類や湿地の生き物の大切さを知るきっかけの場としての役割を果たせればと思います。 

(JAWAN通信 No.76 2003年9月1日発行から転載)