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ラムサール条約登録地「中池見湿地」内の
北陸新幹線建設計画に関する要望書

 敦賀市「中池見湿地」は長年の保全運動が実り、2012年7月、ラムサール条約登録湿地となりました。その念願の登録実現直後にラムサール条約登録地「中池見湿地」内を、貫通する北陸新幹線路線計画の認可が公表されました。
 日本湿地ネットワークでは、この路線計画認可の変更などを求めて、1月7日付要望書を環境省に提出しました。併せて同内容を国土交通省、鉄道建設・運輸施設整備支援機構本社及び北陸新幹線建設局、敦賀市長、福井県知事宛に郵送しました。


<要望書内容>
2013年1月7日

環境大臣 石原 伸晃殿

日本湿地ネットワーク
代表 辻 淳夫

 福井県敦賀市「中池見湿地」は2011年12月に越前加賀海岸国定公園に編入され、更に2012年7月にラムサール条約の登録湿地として認定されました。
 しかし、昨年、6月に発表された北陸新幹線の新たな計画路線図が8月に公表され、条約登録湿地内を北陸新幹線路線が地下通過することが明らかとなりました。今回明らかとなった計画路線は、以前に発表された路線計画よりさらに湿地の内側に変更されていることは不適切であり真に遺憾であります。この路線計画は、中池見湿地の保全にとって致命的な悪影響を及ぼすものと憂慮されます。
 
 ラムサール条約登録湿地は、国際的に重要な湿地であり、将来にわたっての保全を国際社会に約束した湿地です。ラムサール条約では、「締約国は、人間とその環境とが相互に依存して」、「湿地の進行性の浸食及び湿地の喪失を現在及び将来とも阻止し」、「将来に対する見通しを有する国内政策と調整の図られた国際行動とを結びつけることにより確保」と述べています。にもかかわらず登録実現の直後に登録湿地内を貫通する新幹線計画が発表され、条約事務局をはじめ他の条約加盟国の日本国への信用・信頼を大きく損ねています。
 計画路線は、中池見湿地を取り巻く山地を貫通するものであり、水系や地下水脈などを絶ち切り、水環境、水供給に確実に影響を及ぼし、このため湿地全体の良好な自然環境に致命的な影響を与えるものと予測されます。
 
 また、中池見湿地は、「袋状埋積谷」という地形に10数万年もの歴史をもつ泥炭層を有する特異な湿地であり、路線のトンネル北側出入口が計画されている後谷(うしろだに。地元では「おしゃたん」と呼ばれる)地区は、絶滅危惧種をはじめ生物多様性の保全上重要な地域であり、ここを破壊する計画は生態系、景観上からも湿地全体の保全に悪影響を及ぼすものと予測せざるを得ません。
 
 石原伸晃環境大臣殿、環境省は、「中池見湿地」をラムサール条約事務局へ条約湿地の登録申請を行なった責任窓口であり、貴職は登録実現後も、当該湿地の保全の確保と監視を行なう責務があると考えます。
 つきましては、ラムサール条約締約国として国際的な責務を遵守し、現在の北陸新幹線路線計画のすみやかな変更を強く要望いたします。計画路線変更は、ラムサール条約登録地「中池見湿地」の水循環、生態系、景観、騒音、振動の影響など自然環境に特段に配慮し、周辺地域に影響が及ばないよう重ねて要望いたします。

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