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特定外来生物侵入防止策のずさんさが浮き彫り

〜辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会が防衛省交渉〜


 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会は2018年3月15日、辺野古新基地建設と西日本各地からの埋め立て用土砂採取・搬出計画の中止を求めて防衛省と3回目の交渉をおこなった。交渉に先だち、計画の中止を求める要請書を同省に手渡した。また、計画中止を求める2万3411人分(第3次分)の署名を内閣府に提出した。提出署名は合計11万7310人となった。

図4-1

◆特定外来生物の高熱処理に疑問

 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会は、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う西日本各地からの埋め立て土砂搬入を止めるために活動している。協議会には鹿児島、熊本、長崎、福岡、山口、広島、香川、三重、沖縄の各県から18団体が参加している。
 防衛省との交渉では、搬入土砂に混入するおそれのある特定外来生物の侵入防止対策で防衛省のずさんな姿勢があらわになった。
 防衛省は、米軍普天間飛行場代替施設建設の辺野古埋め立て工事用として約2100万立方メートルの土砂を搬入することにしている。沖縄県の本部地区と国頭地区のほか、県外の西日本各地からも膨大な量の土砂(岩ズリ=岩をくだいたもの)を搬入する。
 県外から搬入する土砂にはアルゼンチンアリやセアカゴケグモなどの特定外来生物が混入する可能性がたいへん高い。そのため、防衛省は「水域生物等調査」業務のなかで特定外来生物侵入防止策の試験をおこなっている。特定外来生物を死滅させるための条件をあきらかにし、「特定外来生物侵入防止対策の検討の資(基礎資料)」とすることが目的である。動物については、特定外来生物のアルゼンチンアリとセアカゴケグモに高熱処理をほどこし、生死を判定する試験をおこなっている。
 ところが、今回の交渉によって試験の実効性に疑問のあることが浮き彫りになった。「高熱処理による特定外来生物駆除の実施例は調べているのか。また、過去の文献は調べているのか」の問いにたいし、防衛省は「調べていない」と回答した。また、「高熱処理の具体的な方法を教えてほしい」の問いについては、「具体的な方法をこの場で話す資料はもちあわせていない」とし、回答を避けた。
 協議会のメンバーからは、「本気で外来生物を駆除しようという意欲が感じられない」「ごまかしのためのごまかしをやっているようにしか聞こえない」などの批判が相次いだ。

◆膨大な量の土砂をすべて高熱処理するのは無理だ

 外来生物侵入防止対策は全量処理なのかサンプル処理なのか、という問いにたいしては、「全量処理するかサンプル処理するかについては現時点では計画がきまっていない」の回答である。こうものべた。 「具体的な特定外来生物侵入防止対策については、現時点ではきまった計画がない」。
 こうした防衛省のずさんな姿勢にたいし、協議会はつぎのようにきびしく批判した。
 「県外からもちこまれる土砂(岩ズリ)は膨大な量である。それをすべて高熱処理することができるのか。実験を一部やったとしても、千何百万立方メートルという途方もない量の土砂を高熱処理できるのか」
 「特定外来生物侵入防止の現実的な計画がたっていない段階で埋め立て工事の予算が何百億円もついているのはおかしい。予算を返上すべきだ」
 「外来生物侵入防止の背景にあるのは生物多様性国家戦略だ。その国家戦略を推進する責務は防衛省にもある。国家戦略は閣議決定されているので、すべての省庁がそれを守らなければならない。そういう観点にたったとき、千何百万立方メートルもの土砂に混入するかもしれない外来生物をすべて除去するというのはメチャクチャ大きな仕事である。気が遠くなるような仕事である」
 「特定外来生物は一匹たりとも 沖縄にもちこませないというのが沖縄県の『土砂条例』である。したがってサンプル処理はありえない。沖縄県の立ち入り調査によって外来生物がみつかり、県が駆除を指示したら、すべての土砂について駆除するのが当たり前だ」
 こうした批判にたいして防衛省は、「埋め立て土砂の全量を高熱処理できるのかということについては、現時点では答えるのが困難である」「県条例もふまえて適切に対応したい」の回答をくりかえした。
 動物の特定外来生物に高熱処理をほどこす試験の結果は3月31日までにまとめるという。ところが植物の特定外来生物を対象にした試験は「現在検討している段階」とのべ、実施していないことがあきらかになった。
 沖縄防衛局は2018年3月2日、5件(工区)の埋め立て工事について工事業者と契約した。総額270億円である。この埋め立て工事は沖縄県内産の土砂を使うとのことである。

図4-2

◆知事が許可するまで着工すべきでない

 〜希少サンゴの採捕期限延長を知事が不許可〜
 
 翁長雄志沖縄県知事は2018年3月1日、辺野古の埋め立て予定海域でみつかった希少サンゴをめぐり、防衛省沖縄防衛局が提出していた移植に必要な特別採捕許可の期限延長を認めず不許可にした。
 県は2月16日、絶滅の恐れがあるオキナワハマサンゴ1群体の採捕を許可した。採捕の期限は3月1日だった。期限延長を認めなかったため、許可は無効となった。許可の期限延長を認めなかった理由は、食害対策の検討がなされていないことなどである。
 これについて、辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会はつぎのようにクギをさした。
 「新聞は『早ければ6月にも土砂投入』と報道している。しかし、知事の特別採捕許可がでるまでは埋め立て工事に着手すべきでない」
 これにたいし、防衛省は「沖縄県知事の許可が得られるようにつとめてまいりたい」をくりかえした。

写真4-1
防衛省の担当者(右)と交渉する辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会のメンバー。国会議員(本人)も11人が同席した
(JAWAN通信 No.123 2018年5月20日発行から転載)

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