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辺野古埋め立てと土砂搬出は中止せよ

〜全国協議会が防衛省・環境省に要請 追加署名提出も〜


 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、移転先の埋め立て用土砂搬出に反対している「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」は2016年11月1日、防衛・環境両省と交渉し、埋め立てと土砂搬出計画の中止を要請しました。
 防衛省沖縄防衛局が2013年3月に提出した埋め立て承認願書の添付図書には、土砂の大半を占める岩ズリ(がんずり=岩をくだいたもの)の調達先として、沖縄に加え九州・瀬戸内の7地区・13カ所の採石場が記載されています。
 全国連絡協議会は、土砂搬出予定地となっている鹿児島、長崎、熊本、北九州、瀬戸内海など各地の18市民団体で構成されます。この日の交渉では、防衛・環境両大臣あての要請書を手渡したあと、現地からの訴えがありました。そのあと、要請事項にたいして両省が回答しました。交渉には8人の国会議員と14人の議員秘書も同席しました。
 

写真2-1
辺野古埋め立て用土砂採取計画の中止などを防衛省と環境省の担当者(手前)に要請した=11月1日、衆議院第二議員会館
写真2-2
交渉のあと、西日本各地からの辺野古埋め立て用土砂採取計画撤回を求める内閣総理大臣あての追加署名4万1470筆を提出=内閣府で

 *外来種対策は業者まかせ

 全国協議会の質問・要請と防衛・環境両省の回答は以下のとおりです。
 
(1) 環境省は4月22日、「生物多様性の観点から見た重要度の高い海域」(重要海域)として合計321海域(うち沿岸域270海域)を公表した。新基地建設予定地の辺野古と大浦湾も重要海域に含まれる。埋め立て予定地では生物調査をするたびに新種が発見されている。そのような海を埋め立てることは、生物多様性基本法にもとづく生物多様性国家戦略に抵触する。
 
 〔防衛省の回答〕
 辺野古への基地移設については、今年3月4日の福岡高裁那覇支部の和解案を受け入れ、埋め立て工事を中止している。埋め立て工事を再開する場合も、関係法令にのっとって環境に配慮して進めていくことにしており、生物多様性国家戦略に反するものではない。
 
(2) 気候や緯度の異なる海域から土砂を搬入することは、外来種の持ち込みをもたらしかねない。那覇空港第2滑走路建設の埋め立て工事では、石材の搬出元である奄美大島の採石場を沖縄県が立ち入り調査した結果、すべての調査点で特定外来生物ハイイロゴケグモが確認された。外来種対策として、防衛省は「事業者の責任として沖縄防衛局が適切に対応する」としているが、それをどう担保するのか。「埋め立て土砂の供給業者に所要の調査などを義務づける」としているが、それで十分な調査ができるのか。第三者的な専門家や調査機関に委託すべきではないか。
 
 〔防衛省の回答〕
 土砂供給業者に所要の調査などを義務づける。沖縄防衛局が設置した環境監視等委員会(普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会)の指導・助言を得て、さらなる調査が必要と判断される場合は供給業者に再度確認を求めるなど、沖縄防衛局において適切な対応をとる。
 
(3) 採取場所から外来生物が発見された場合、外来種の持ち出しは禁ずるとの本来の目的からすれば、その場所の岩ズリは使用すべきでない。那覇空港第2滑走路建設工事では石材を簡易に洗浄している。そのようなことで外来種のまぎれこみを防止できるのか。大きさが大小異なり、泥砂が混じる岩ズリの場合は洗浄がほとんど不可能と考えられる。
 
 〔防衛省の回答〕
 辺野古の埋め立てに用いる土砂については、環境影響評価のプロセスにおいて環境保全に配慮することとしている。
 
(4) 土砂供給予定地の沿岸海域の約6割は「重要海域」に含まれている。この点についてどのようにとらえ、どう対処するつもりか。
 
 〔環境省の回答〕
 重要海域は、既存の情報にもとづいて科学的・学術的な作業として抽出したものである。それがダイレクトに効力を発揮するものではない。ただ、じっさいには、それを配慮のもととして考えていただくものと期待している。個別の場所の土砂採取にともなう環境配慮は、供給業者によって必要な対策がとられるべきである。環境への配慮も業者においてやっていただくことになる。
 
(5) 土砂供給予定地は、国立公園やジオパーク、さらには世界遺産登録をめざす地域やその隣接地である。予定地では山が削られ、土砂が川や海に流入するなどの自然破壊が進んでいる。生物多様性国家戦略を推進する立場からも、これらの実態調査をすべきである。
 
 〔環境省の回答〕
 個別の具体的な事業は、その地域の自然的・社会的条件に応じたかたちで適切に判断しておこなわれるべきものと理解している。採取をおこなう地域の問題は、個別に必要な対策がとられるべきであると考えている。辺野古の場合も、事業者である防衛省が土砂供給地域の土砂採取による環境影響も配慮していると承知している。
 
(6) 辺野古埋め立て用資材とされるハイブリッドケーソンは本土側で製造するといわれている。防衛省はその発注内容・仕様書などを把握しているのか。
 
 〔防衛省の回答〕
 ケーソン新設工事は五洋建設に発注した。発注者である沖縄防衛局は仕様書などを承知している。しかし、五洋建設がハイブリットケーソンを製造する下請け業者と契約を締結した実績はない。したがって、おたずねの仕様書について答えることは困難である。
 
(7) 土砂供給予定地の一つに熊本県天草市の御所浦地区が含まれている。そこの採石場では、採石したあとの崖が「白亜紀の壁」と名づけられている。岩ズリには、約1億年前の白亜紀の恐竜やアンモナイト、三角貝など膨大な化石が含まれている。このことを承知しているか。化石は、当時の環境と生物多様性の様子を具体的に証言している。いわば歴史の証拠であり、生物の遺骨である。その遺骨が含まれている岩石を使って、生物多様性の宝庫ともいうべき辺野古の海を埋めることは、倫理的にもしてはならない。
 
 〔環境省の回答〕
 土砂供給予定地についての詳細な情報は防衛省からいただいていない。環境省としては、公表されている資料の中からいろいろと情報を収集しているところである。
 辺野古については、土砂供給業者が環境に配慮するということが環境影響評価書などに記載されているので、そのとおりにやっていただけると考えている。
 
 以上です。防衛・環境両省の回答は、総じてまともなものではありません。たとえば外来種対策は土砂供給業者まかせです。
 防衛省とのやりとりでは、辺野古埋め立て用土砂の購入・運搬などにかかる経費として今年度(平成28年度)予算に約816億円を計上していることがわかりました。816億円は3カ年分の経費です。防衛省は、「和解決定にもとづいて今は埋め立て工事を中止しているので、土砂供給業者との契約はおこなっていない。予算計上されていない作業は実施しない」と答えました。
 交渉のあとは内閣府を訪れ、西日本各地からの辺野古埋め立て用土砂採取計画撤回を求める内閣総理大臣あての追加署名を4万1470筆提出しました。昨年10月15日に提出した分とあわせて、署名は9万3899筆になりました。
 
 以下は、交渉の冒頭におこなわれた現地からの訴えと、防衛・環境両省の回答内容をめぐるやりとりです。

現地からの訴え(要旨)


文・写真/中山
(JAWAN通信 No.117 2016年11月30日発行から転載)

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