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重要湿地のラムサール条約登録などに関する要望

環境大臣 山本公一 様
日本湿地ネットワーク
 共同代表 辻 淳夫、牛野くみ子

 環境省におかれましては、平素より湿地などの自然環境の保全にご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
 私たち日本湿地ネットワーク(JAWAN)は全国各地の湿地を保全するために活動しています。重要湿地の保全策やラムサール条約登録について、下記のとおり質問と要望をさせていただきます。

 1.日本の湿地は減少が著しく進んでいます。日本に存在する湿地は明治・大正時代の40%足らずでしかないとされています。湿地激減の主因は埋め立てなどの開発工事です。とくに干潟は惨たんたる状況になっています。
 また環境省が平成28年4月に発表した資料によれば、「日本の重要湿地500」で生物分類群ごとの視点でみた961湿地のうち823湿地について情報を得られ、そのうち524湿地は「悪化傾向」にあるとされています。「悪化傾向」とされる524湿地のうち、劣化要因の情報があった368湿地について主たる要因を分類したところ、「開発など人間活動による危機」(埋め立てなど)が54%を占めています。
 ところが、環境省は、湿地の減少や悪化を防ぐための全体的な戦略をもっていないようにみうけられます。湿地の減少・悪化を食い止めるために有効な対策を講じてくださるようお願いします。
 
 2.ラムサール条約の主な目的は、急速に失われつつある重要湿地を将来の世代に残すことです。ところが日本では「地元自治体などの賛意」が登録条件のひとつとなっています。
 地元自治体は、湿地を消失・悪化させる開発工事などに深く関わっています。したがって、地元自治体などの賛意を登録条件とするかぎり、開発の危機にさらされている重要湿地のラムサール条約登録は進みません。本来登録されるべき湿地、あるいは優先度の高い湿地が登録されないというしくみになっているのです。そのため、ラムサール条約湿地が増えても重要湿地は相変わらず消失・悪化が進むという状況になっています。これではラムサール条約締約国としての責務を果たしていないことになります。
 つきましては、開発の危機に瀕している重要湿地をラムサール条約に登録するために、環境省がリーダーシップを発揮してくださるようお願いします。三番瀬、盤洲干潟(小櫃川河口干潟)、三河湾、新舞子干潟、ハチの干潟、吉野川河口、和白干潟、泡瀬干潟などについては、2018年に開かれる次回のラムサール条約締約国会議(COP13)で登録されるよう、ご尽力をよろしくお願いいたします。
 
 3.ラムサール条約湿地の中池見湿地については、北陸新幹線のルートが変更されたものの、相変わらずラムサール条約登録区域内を新幹線が通ることになっています。それも、集水域として一番重要な深山にトンネルを掘ることになっています。
 環境省におかれましては、世界に誇る泥炭層の中池見湿地を守るためにも、北陸新幹線の工事に対して厳しく監視と指導をしてくださるよう要望します。
 

(JAWAN通信 No.117 2016年11月30日発行から転載)

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