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辺野古埋め立て用土砂搬出に反対

〜環瀬戸内海会議などが環境、防衛両省に申し入れ〜


 「環瀬戸内海会議」と「自然と文化を守る奄美会議」は2月6日、沖縄・辺野古(へのこ)基地建設の埋め立て用として瀬戸内海や奄美諸島などから土砂(岩ズリ)を採取・搬出する問題で、環境省と防衛省に反対を申し入れました。日本湿地ネットワーク(JAWAN)からも牛野くみ子事務局長、中山敏則事務局次長、細田邦子さんの3人が参加しました。

沖縄・辺野古基地建設の埋め立て用土砂の採取・搬出反対を防衛省に申し入れる「環瀬戸内海会議」と「自然と文化を守る奄美会議」の人たち=2月6日、防衛省で

 安倍政権は沖縄県知事選や衆院選で示された沖縄県民の民意を無視し、名護市の辺野古の海を埋め立てて米軍新基地を建設しようとしています。埋め立てに用いる土砂は、沖縄県外からも持ち込まれます。
 防衛省沖縄防衛局が2013年3月に提出した埋め立て申請書には、土砂の大半を占める岩ズリ(岩をくだいたもの)の調達先として、沖縄に加え九州・瀬戸内の7地区・13カ所の採石場が記載されています。九州では奄美大島や天草など、瀬戸内では小豆島(香川県)や黒髪島(山口県)などです。
 埋め立て申請書によれば、東京ドーム17個分にあたる2062万立方メートルの土砂で辺野古の海を埋め立てます。構成比は岩ズリ79.7%、山土17.5%、海砂2.8%です。山土と海砂は沖縄本島と近海から、岩ズリは半分程度が県外から搬入されるとみられます。沿岸の埋め立て工事で遠方からこれだけ大量の土砂を調達するのは異例です。
 両団体は防衛省に対する申し入れ書でこんなことを書いています。
 「辺野古基地建設のための土砂の奄美群島・瀬戸内海圏域からの採取・搬出は、持ち去られる側にあっては人為では復元不可能な自然破壊・景観破壊、そして所によっては採取地拡大に伴う地域住民の生命の危険、健康被害をもたらし、持ち込まれる辺野古にあっても埋め立てによる環境破壊・生態系破壊がもたらされることは必定です」
 「瀬戸内海は国立公園指定第1号の陸海域であり、奄美群島は国立公園化、自然遺産登録が視程(してい)にあります。まさに世界に誇る豊かな自然を今に残す、かけがえのない地域です。そして自然公園法や瀬戸内海環境保全特別措置法に則り環境保全を義務付けられている地域です。にもかかわらず瀬戸内海の島嶼(とうしょ)部や奄美大島、北九州を中心に、採石許可が延々と更新され、これまで土砂採石が年々拡大してきました。今また、この地域から辺野古基地建設のための埋め立て土砂を採取・搬出するとは、にわかに信じ難いことです」

 「昨年、沖縄県では、1月には辺野古が位置する名護市の市長選挙、名護市議会議員選挙、11月の沖縄県知事選挙、そして12月の衆議院議員選挙と、いずれも辺野古新基地建設に反対する候補者が当選し、文字通り『オール沖縄』で辺野古基地反対という強い意志、沖縄県民の民意が示されました。それでも政府は、「辺野古移設を粛々と進める」と強弁し、沖縄県民の民意を真摯(しんし)に受け止めようとしないばかりか、沖縄県新知事のたびたびの面談要望も拒否し続けています。このような政府の態度は、権力者の横暴・傲慢(ごうまん)以外の何ものでもありません。ましてや、このたびの辺野古基地建設に伴う土砂採取・搬出は、西日本各地の大規模な土砂の域外移転を伴う計画であり、動植物の卵・種子の不用意な移動・攪拌(かくはん)をもたらし、その影響は測り知れません」
 「加えてこれらの地域の環境影響評価もする予定さえありません。これらは政府がうたう地方創生の理念にも反しており、『法治国家』『民主主義国家』の名前を汚す行為にほかなりません。さらに平和を切望する住民に有無を言わせず基地建設に間接加担を強いようとするものです。また奄美市住用町の採石地に隣接する集落は年々拡大する採石場が唯一の生活道路に迫って落石被害をもたらし、通行にさえ危険を伴い、日々恐々とした暮らしを余儀なくされています」
 「以上の観点から、私たちは、奄美、瀬戸内海の破壊と、辺野古基地建設に伴う埋め立てによる辺野古地区地先はじめ、北限のジュゴンのえさ場であり、サンゴが群生する大浦湾の環境を破壊し尽くす本件計画に強く反対し、本件計画の即時白紙撤回を強く求めます」
 大量の土砂搬出が予想される奄美市住用町(奄美大島)では、かつて近隣の集落が採石による振動や粉じんなどの被害を受けていました。石材を積んだ大型トラックが走る道路は通学路にもなっています。住民は、「辺野古への搬出が始まれば、騒音や粉じん被害が再び拡大しかねない」と危惧しています。

◆国会議員にも要請

 両団体は、国会議員に対しても、土砂採取・搬出を中止させるよう要請しました。水岡俊一参院議員(民主党、兵庫県選挙区、参院環境委員会理事、同予算委員会委員)はこう述べました。
 「環境破壊という観点でこの問題を国会でとりあげたい。沖縄の辺野古基地建設のために日本国内のいたるところから土砂を運ぶという実態を明らかにしたい。地域住民の意向をくんだものであるのかどうかという、そういう観点で政府を問いただすことはできると思う」

水岡俊一参院議員(民主党、兵庫県選挙区、参院環境委員会理事、同予算委員会委員、左端)に辺野古埋め立ての土砂採取・搬出を中止させるよう要望=2月6日、参議院議員会館
(JAWAN通信 No.110 2015年2月28日発行から転載)

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