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■湿地保全団体の紹介

蒲生を守る会

〜本当に大切なものは何なのかを考える〜


蒲生干潟位置図

 蒲生(がもう)干潟は、宮城県仙台市の北部を流れる七北田川河口から仙台港の南防波堤まで続く2kmほどの自然海岸に形成された潟湖干潟です。
 1970年代の仙台新港建設工事で半分近くが消失し、残りもすべて埋め立てるという計画が出されていました。干潟を守るために1970年4月23日に「渡り鳥の国際空港、蒲生干潟を守れ!」「自然を愛する心を守れ!」をスローガンに掲げ、埋め立て中止を行政に訴え、蒲生干潟の自然環境を守るために「蒲生を守る会」が発足しました。
 東日本大震災(2011年3月11日)によって蒲生海岸は壊滅的となり、潟湖状の干潟も一部の報道では修復困難とまで言われました。蒲生を守る会ではその年の4月から月例の鳥類生息調査を再開しました。蒲生干潟の地形は見る見るうちに回復し、その年の7月には震災前の地形をほぼ取り戻しました。台風の影響により海岸の一部が決壊するなど何度か形を変えながら、2014年現在は震災前の地形に近づきました。鳥類では、海岸林の一部がなくなったことや、ヨシ群落がなくなった影響などで陸鳥の回復が遅いのですが、水鳥は種数個体数ともに震災前の水準まで回復しました。
 しかし、宮城県などの復旧事業では蒲生干潟と陸側とを分断する大きな堤防を計画しています。蒲生干潟に近接する被災した地域は仙台市が災害危険地域としました。昔から干潟とともに生活してきた地元の方々は今後そこに住むことはできなくなりました。仙台市は再区画整理により商工業化を目指しています。蒲生地区は江戸時代から海運業で栄えたところでした。歴史を今に伝える貞山運河の石積みなども区画整理で商工業地区の下に永遠に埋まってしまいます。自然豊かな蒲生干潟とともに生活してきた地元の方々と力を合わせて蒲生にとって最良の選択をすることを求め運動しています。
 昨年から複数の団体との共催で夏に観察会も再開しました。多くの皆さんに現状を知ってもらう機会になりました。堤防だけが人の命を守る訳ではありません。今回の堤防も結局のところ想定値をもって建設されます。100年〜150年に一度程度の津波を想定しています。今回のような1000年に一度の津波は想定していません。しかし、生態系サービスは適当な攪乱を受けて何千年と存続することでしょう。私たちに豊かな恵みを与えてくれます。想定を設けて数百年に一度のための代償は人類にとっては大きすぎるものと思われます。今後も私たちは安全と安心は何なのか? 何が本当に必要なのか? といった問題を考えながら活動してまいります。

写真1
2013年夏の観察会
写真2
絶滅が心配される「クリイロカワザンショウ」を発見!
(蒲生を守る会 中嶋順一)
(JAWAN通信 No.109 2014年11月30日発行から転載)

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