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生物多様性条約COP10の概要と日本の取組み

環境省自然環境局生物多様性地球戦略企画室 中島 尚子

1.はじめに

  2010年は、国連が定めた国際生物多様性年であり、世界各地で生物多様性に関するさまざまな活動が実施されています。そのような中で、10月に愛知県名古屋市で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、生物多様性に関する新たな世界目標の設定など、さまざまな課題が議論される予定です。COP10まであと3ヶ月となりましたが、この機会に、生物多様性条約の概要をはじめ国内外の動向についてご紹介したいと思います。

2.生物多様性条約と日本の国家戦略

  生物多様性条約は、1992年に誕生、翌1993年に発効し、これまで193の国や地域(EU含む。米国は未加盟)が条約を締結しています。日本は、この条約の当初からの加盟国であり、1995年には、生物多様性に関する国の基本方針と施策をとりまとめた「生物多様性国家戦略」を策定しました。
  昨年以降、「生物多様性基本法」(2008年)等の動きを踏まえた3度目の改定を行い、本年3月16日に「生物多様性国家戦略2010」を決定しています。なお、条約のもとで、遺伝子組換え生物(LMO)の使用による生物多様性への悪影響を防止するための「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」が2003年に発効し、我が国を含め157の国と地域が加盟しています。

3.生物多様性に関する2010年目標とその達成状況

(1)地球規模生物多様性概況第3版(世界の生物多様性)
  2002年、オランダのハーグで開催されたCOP6では、「生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる」との条約の戦略目標(「2010年目標」)が採択されました。しかし、本年5月に条約事務局が公表した「地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)」によれば、世界の生物多様性の状況を示す15の指標のうち9において悪化傾向にあり、地球規模で2010年目標は達成されなかったという現実が明らかになりました。
(2)我が国の生物多様性総合評価(JBO)
  GBO3の公表と時期を一にして、日本の生物多様性の現状と傾向を評価した「生物多様性総合評価(Japan Biodiversity Outlook)」の結果が公表されました。2010年までの生物多様性の損失状況について森林、農地、都市、陸水、沿岸等の生態系ごとに評価を行った結果、全体として生物多様性の損失は止まっていないことが示されました。(図1)

図1:生物多様性総合評価(JBO)の結果

4.COP10の主要議題

(1)ポスト2010年目標
  GBO3の結果を踏まえて、COP10では、「意欲的かつ現実的で、計測可能」なポスト2010年目標の策定が強く求められています。日本は、議長国として議論を積極的にリードしていくため、研究者やNGO等との意見交換やパブリックコメントを経て、本年1月に日本提案を取りまとめ、事務局に提出しました。
  本年5月にナイロビで開催された条約の実施レビュー作業部会では、日本提案による「自然との共生」の概念が2050年までのビジョンとして盛り込まれました。(図2)

図2:ポスト2010年目標(案)の概要

(2)ABS(Access and Benefit Sharing)
  ABSとは、条約の3番目の目標である「遺伝資源の取得とそれから生じる利益の公正で衡平な配分」を意味し、COP8では、COP10までにABSの国際的枠組みの検討を完了させることが決定されました。
  本年3月にコロンビアで開催された政府間作業部会では、「ABS議定書」原案が共同議長から提示されましたが、対象範囲、特許申請における情報開示等の大きな論点があり、7月にモントリオールで開催される作業部会で引き続き検討される予定です。
(3)持続可能な利用(SATOYAMAイニシアティブ)
  生物多様性を保全していく上では、原生的な自然だけでなく、持続可能な農林業などの人間の営みを通じ維持されてきた二次的自然地域もきわめて重要です。
  このような二次的自然地域の維持・保全の重要性や知見を共有し、「自然共生社会の実現」を目指すため、我が国は、国連大学と連携し「SATOYAMAイニシアティブ」を提唱しています。COP10では、各国や国際機関、NGO等多様な主体が参加する「国際SATOYAMAパートナーシップ」を立ち上げ、国際的ネットワークの構築を進める予定です。
(4)その他
  COP10では、上記の主要課題のほかにも、「保護地域」、「海洋と沿岸」、「気候変動」「資金メカニズム」「民間参画」「都市と自治体」など、さまざまな議題が議論される予定です。

5.さいごに 〜市民団体への期待と役割〜

  日本には、COP10以降2年間を条約の議長国として、国際的なリーダーシップを発揮していくことが求められています。5月に開催された条約の実施レビュー作業部会では、日本提案により国連「生物多様性の10年」決議を国連総会に提起していくことが合意されました。
  その際、日本のNGOを代表しててCBD市民ネットワークから、本決議の実施に向けて国際社会と連携しながら役割を担っていくことが表明されました。生物多様性保全という横断的な課題について取組を進めていくためには、政府のみならずさまざまな主体の参加・協働が不可欠であることは言うまでもありません。COP10をきっかけに一人一人が生物多様性保全にむけた取組を開始するための架け橋として、NGOの知恵と力に大きな期待を寄せています。

(JAWAN通信 No.97 2010年7月10日発行から転載)

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