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2月危機を乗り越えて

 大浜 清 (千葉の干潟を守る会代表)
 

存続の危機

 2月22日、日本湿地ネットワーク(JAWAN)の総会で、存続か否かが問われました。
A案:「JAWANをラムネットの後継組織に
     合流させ、発展的解消する」 (提案 堀 良一さん)
B案:「JAWANは存続、ラムネットとは別
     の活動体」  (提案 辻 淳夫さん)


 A案は80対30で否決、B案が78対32で可決され、JAWAN結成以来最大の危機を乗り越えましたが、A案の人々の脱退が相次ぎ、今後の運営体制と会員の協力に大きな課題が課せられた形になりました。 

解消案の提起

 昨年11月22日のJAWAN運営委員会に、JAWAN副代表でありラムネット事務局長である浅野正富さんから、ラムネットへの合流が提案されました。
 ラムネットとは、昨年2008年10月に韓国昌原で開催された第10回ラムサール条約締約国会議(通称COP10)に向けての取り組みを強化する目的で、JAWANメンバーが主力となって2008年3月に結成された「ラムサールCOP10のための日本NGOネットワーク」の略称です。
 その主旨は、
 「ラムサール条約、生物多様性条約等、国際活動を強化すべきである。ラムサール運動の拡大に応じるには、従来のJAWAN活動では絶対に加わってもらえなかった顔ぶれとも統一戦線を組むべきで、現JAWAN体制では対応できない。資金も広いパートナーの支援が必要であり、そのための意志統一が必要である。今後のラムサールへの取り組みのためには環境、農水、国交省とのタイアップが必要である。」(運営委員会へ浅野氏提出、総会配布資料による)

 故山下弘文さんとともに、JAWAN創設以来中心的活動をしてきた辻淳夫さんやラムネット運営委員以外の委員はこれをJAWAN解散提案ととらえ、反対しました。
 その主旨は、
「JAWANはJAWANとして活動し存続すべきである。JAWANは草の根団体・個人の湿地保全活動の助け合いから出発し、今もその活動のよりどころとなっている。他の全国団体や国際団体との協調も運動の一環である。釧路会議以来、ラムサール条約活動も実績を上げて来た。ラムネットもその中から生まれたし、ラムネットとして活動していけばよい。」(総会配布、B案主旨説明による) 

JAWAN会員の立場から

 この提案を耳にした時、私はびっくりしました。
 組織の存否という問題が一度も会員全員に説明されず意思も問われないまま、運営委員会だけで決めようとしたということです。しかも議論は運営委員の間のメールのやりとりで過熱し沸騰しているということでした。辻さんが提案主旨で「重大な組織改編は、広く会員で話し合い、その合意のもとに進められるべき事柄です。」と述べているのは、まさに市民運動の基本原則です。批判と寛容の上で議論できないのか。
 ある個人会員が、総会に出られないが、委任はしたくないと、次のようなメールを発したということです。
「『お前の嫁入り先はラムネットだ』と封建時代の父や兄から突然言われたような衝撃です。ラムネットさんって誰?………、企業やデベロッパーや国家権力が土地開発を進め、湿地保全を叫ぶ人々と厳しく対峙する時、苦闘を共有してくれる人なのか、まったく分からないのです………」
 JAWANの本領はそこにありました。三番瀬の保全がまだ見通しがたたず、千葉県の埋立縮小の立案に乗って袂を分かって去った人たちが巾を利かしたころ、「この東京湾で、これ以上一坪たりとも埋め立てを許すな」と痛烈に激励をしてくれたのはJAWAN代表故山下弘文さんでした。

 2月危機を乗り越えて
 「小異を残して大同につく」

 彼はまたいくつも名言を残しました。「小異を残して大同につく」、「連帯を求めて孤立を恐れず」、「負けてもともと勝てば大ごと」
 ラムネット合流派の主張には(人にもよるけれど)こういった草の根の運動にもとづく意見は見られず、逆にこれから統一戦線を組もうとし、資金援助を求めようとする相手は、タイアップしようとする行政権力の中身は何なのか問われることでしょう。
 無論私たちは広い市民と一緒にやりたいし、お役所とも協同できることは一緒にやりたい。しかし節操は大切です。ラムサール条約は私たちにとって大事であり、実現したい。だからこそJAWANに参加しているのです。しかしそれは私たちが取り組む運動の一面であり、ラムサールだけが頼りでは、湿地保全が成就する訳はありません。
 ラムネット合流が成らなかったからと去って行く人には、山下さんの言葉が聞こえないのかな? さあ、これから私たちは?

(JAWAN通信 No.93 2009年5月30日発行から転載)

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