ラムネットの設立と
世界湿地NGO会議の準備状況

浅野正富 ラムネット事務局長

 1993年の釧路でのCOP5以来15年ぶりに東アジアでの開催となるラムサール条約COP10が2008年10月28日〜11月4日韓国チャンウォン市で開催され、本会議直前の10月26〜27日には世界湿地NGO会議が開催されます。その事前会議として、東アジアに共通する湿地保全の問題とCOP10までのNGO戦略を議論するため、韓国から13名のNGO代表を招き、2007年10月12〜14日に日本湿地ネットワークとWWFジャパンは「第1回日韓NGO湿地フォーラム」を開催しました。
 フォーラムでは、東アジアの伝統的農業・漁業が近代化で失われ、湿地が破壊されてきたことをレビューし、COP10を契機としてかつての賢明な利用を新たに再構築する政策の実現を目指すため、湿地の賢明な利用に関する成功事例あるいは湿地を破壊してしまった誤った開発政策等の事例が具体的に報告、討論され、最終日には、「COP10を契機として東アジアの『健全な湿地、健康な人々』の再生をめざす宣言」が採択されました(http://www.jawan.jp/libr/lb071230jknwf1012s.html)。
 この宣言の趣旨に基づき、2008年2月には韓国で「ラムサールCOP10のための韓国NGOネットワーク」が設立され、そして、3月8日には日本で日本湿地ネットワークやWWFジャパンはじめ全国で湿地保全に取り組むNGOが集合して「ラムサールCOP10のための日本NGOネットワーク」が設立されました。略称はラムネットです。WWFジャパンの花輪伸一氏、日本雁を保護する会の呉地正行氏、日本湿地ネットワークの堀良一氏の3名が共同代表を務めています。

 両ネットワークは、WWFジャパンとの共催で、4月29〜30日に第2回韓日NGO湿地フォーラムをソウルで開催しました。過去のCOPのプレNGO会議で活躍されたマレーシアのアンソニー・セバスチャンさん、コスタリカのメリッサ・マリンさんをゲストに、COP10のNGO会議を成功させるため具体的なアジェンダを検討しました。このJAWAN通信が皆様のお手元に届くころには全世界に世界湿地NGO会議の案内がリリースされていると思いますが、NGO会議では、NGOの視点から賢明な利用、湿地政策、CEPA、温暖化、貧困問題などを検証することを予定しています。また、世界中の地域に根ざすNGOが湿地保全に主導的役割が果たしていけるよう、COP11までに常設の組織として「国際湿地NGO委員会」を設立することも計画されており、NGO会議では、そのための議論も予定されています。
 ラムネットが後援する行事として、5月31日〜6月1日には日本湿地ネットワークとラムサール条約湿地を増やす市民の会が主催する「ラムサールCOP10に向けてのワークショップ」が千葉県市川市の和洋女子大学を会場にして開催され、日本からCOP10に参加しようと考えている団体が集合して情報交換と作戦会議を行いました。
また、8月30〜31日には釧路のCOP5からチャンウォンのCOP10までの15年間の各地の湿地の状況、湿地政策をレビューするワークショップをかねて、ラムネットとWWFジャパンとの共催で第3回日韓NGO湿地フォーラムを日本で開催する予定です。

 韓国では、李大統領の選挙公約であった、3つの大きな運河を建設することにより韓国で最大級の4河川を接続するという大運河計画に対し、環境NGOから大規模自然破壊であるとして大きな批判が浴びせられていましたが、最近、韓国環境府長官が 「運河を推進するのであれば、被害を極小化して親環境的に作る部分が環境府の所管である」と発言したため、「ラムサールCOP10のための韓国NGOネットワーク」も強く反発しています。その結果、世界湿地NGO会議を開催するに際しては、韓国政府や大運河計画を積極的に支持している慶尚南道からは経済的援助を受けないとの方針が取られることになり、世界湿地NGO会議の開催場所も当初予定されていたCOP10の本会議が開催される慶尚南道のチャンウォン市から変更になる可能性もあり、10月下旬までまだ紆余曲折が予想されます。
 1993年の釧路のCOP5以来、COPに参加するNGOは、COPの本会議中にNGOのミーティングを開催したり、非公式会合で主導的役割を果たして、本会議の決議や勧告にも影響を及ぼしてきました。また、1999年のCOP7からは本会議に先立ってプレNGO会議も開催してきました。しかし、2005年のウガンダでのCOP9では、様々な事情から、プレNGO会議も開催されず、NGOがミーティングを開く場所の確保さえ困難な状況でした。COP5以来東アジアで15年ぶりとなるCOP10で、再びプレNGO会議である世界湿地NGO会議を開催できなければ、ラムサール条約に関してNGOが担ってきた役割が大きく後退してしまうでしょう。

 ラムサール条約は元々湿地保全に取り組むNGOの働きかけによって誕生した条約ですから、再びNGOが湿地保全のために主導的役割を果たすことができるように、私たちは韓国のNGOと連携して、世界湿地NGO会議を必ず成功させなければなりません。
 そのためには、皆様のお力添えが不可欠です。どうか皆様の積極的なご参加、ご支援を頂きますよう、よろしくお願い致します。

(JAWAN通信 No.91 2008年7月1日発行から転載)


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