国際湿地シンポジウムin吉野川で採択された
吉野川宣言

 2007年2月24日に徳島市で開催した国際湿地シンポジウムin吉野川(主催:日本湿地ネットワーク/日本野鳥の会徳島支部)では、ナクトンガン河口と吉野川河口のラムサール条約湿地への登録を目指して下記の「吉野川宣言」が採択されました。


吉 野 川 宣 言

 悠久の時を越えて続く大地の営みの中で滔々と流れ行く大河、韓国ナクトンガン(洛東江)と四国吉野川。ナクトンガンは全長525km、流域面積23,384km2の韓国一の大河であり、四国三郎と呼ばれる吉野川は河口から第十堰まで14.5kmの汽水域を有し、河口幅は1.3kmと国内一を誇る清流である。その二つの大河を繋いで、今日、徳島に集う私たちは、大河の恩恵に支えられて生きる喜びを分かち合い、この二つの大河の恩恵を守ることを誓い合った。
 ラムサール条約は、国際的に重要な湿地を条約に登録し、国内のすべての湿地を賢明に利用することを締約国に義務づけ、湿地の恩恵を私たちだけでなく、将来の世代も私たちと同様に享受できるようしなければならないとしている。条約締約国である韓国と日本は、多くの絶滅危惧種が生息する河口干潟の自然生態系の豊かさを中心に国際的に重要な湿地の登録基準を充たしているナクトンガン河口、吉野川河口を条約に登録し、その恩恵を守る責務を負っている。
 ナクトンガン河口は湿地保護区など5種類の保護区の指定を受け、吉野川河口は「東アジア〜オーストラリア地域におけるシギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」に参加してシギ・チドリ類の生息地を守る努力を国際的に約束している。にもかかわらず、両大河の河口部の開発は止まることがなく、この数十年間、私たちの生活を少しでも便利にしようという目的の下、大河の恩恵の源泉が破壊され続けてきた。ナクトンガン河口ではすでに河口堰の建設によって汽水域が分断され、湿地保護区の中でミョンジ(鳴旨)大橋の工事が進み、新港湾建設も計画されている。吉野川河口では東環状大橋が着工されただけでなく、その下流に四国横断自動車道による橋が計画され、さらにマリンピア沖洲第2期埋立や第十堰可動化等の計画が現実化したときの自然生態系に与える負荷の大きさは計り知れない。私たちは、賢明な利用どころか、何千年にも亘って大河の恩恵を受けて営まれてきた生活の基盤を壊し、将来の世代が受けるべき大河の恩恵を奪い続けているのである。
 1人でも多くの市民に、将来の世代のために果たすべき私たちの責任の重さを伝え、ナクトンガンと吉野川の恩恵を守ろうと誓い合うことによって、はじめて賢明な利用が可能になり、ラムサール条約登録への道が拓かれる。私たちは、これ以上自然生態系に負荷を与える開発を直ちに中止し、ナクトンガンと吉野川の賢明な利用を実現して、国際的に重要な湿地として条約に登録することによって、私たちの先達がこの両大河の恩恵を私たちに遺してくれたことに報い、私たちの将来の世代に対する義務を履行しなければならない。
 日本の諫早湾では、日本最大のシギ・チドリ類の最大の渡来地であった諫早干潟が干拓事業により全長7kmの潮受け堤防で閉め切られてから10年を迎え、韓国では、諫早干潟の11倍もあるセマングム干潟が全長33kmの潮受け堤防で閉め切られて1年を迎える。2008年10月には韓国昌原市で第10回ラムサール条約締約国会議が開催されるが、韓国、日本では、いまだに各地で開発優先の政策によって多くの湿地が破壊され続けている。
 私たちは、ナクトンガン、吉野川だけでなく、開発によって破壊の危機にある韓国、日本そして世界の湿地を繋ぎ、1人でも多くの市民と将来の世代と連帯して、すべての人と生き物のために、湿地の賢明な利用を実現して湿地の恩恵を守るべく、可能な限りの力を尽すことを、今ここに宣言する。

  2007年2月24日

     国際湿地シンポジウムin吉野川
     「韓国ナクトンガン・吉野川のラムサール登録を目指して」参加者一同


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